CM制作の流れは?制作にかかる期間や全体のスケジュール感を解説

CM制作がどんな流れで作られているのか、また制作に必要な期間について気になったことはありませんか。将来的にCMや広告を作る仕事に就きたいと考えている方の場合は、より一層制作過程を知りたいと感じていることでしょう。今回は、企画から放映に至るまでのCM制作の流れについて解説します。


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CM制作にはどれくらいの期間がかかる?

テレビCMを制作する際の大まかな流れは、以下のとおりです。

1.ブリーフィング(オリエンテーション)

2.企画

3.コンテ制作

4.キャスティング

5.撮影準備

6.撮影

7.編集

8.考査・放送枠の決定

9.放送・効果測定

すべての工程を踏む必要があるため、制作期間として2~3ヶ月程度が必要となります。必要な期間については、動画または静止画のどちらであるか、撮影が必要かなどによって、大きく異なることを覚えておきましょう。

CM制作の大まかな流れ

1本のCMを制作するには、先述のように大きく9つの工程を踏む必要があります。各工程において具体的にどんなことを行う必要があるのか、ひとつずつみていきましょう。

1.ブリーフィング(オリエンテーション)

CM制作におけるファーストステップとなるのが、ブリーフィング(オリエンテーション)です。ブリーフィングでは、広告主や広告代理店、制作会社の間でどんなCMにするのか打ち合わせを行います。

具体的には、広告主からターゲット層や売り込みたいこと(もの)、期待する効果、ブランドイメージなどについて説明を受けます。予算感や希望とする納期についても、このタイミングで聞き出しておきましょう。

そして、それらの情報をもとに具体的なCMのイメージを検討します。広告主、広告代理店、制作会社の3社間でイメージのズレがないように、よくすり合わせておきましょう。

加えて、CMのフォーマットについても話し合いを行います。具体的には、電車内のモニター、ビルのモニター、テレビCM、YouTubeの広告などを予算の中で割り振ります。

2.企画

ブリーフィングで話した内容をもとに企画を作成します。ほとんどの場合、この工程を担当するのはCMプランナーです。この段階でCMの具体的なイメージが固まっていると、作業をスムーズに進められます。

できあがったCMがターゲット層の心を掴むものになるかどうかは、CMの企画にかかっているといっても過言ではありません。企画はCM制作においても重要な工程なので、しっかりとした作り込みが大切です。

CMプランナーは、広告主からの要望などをもとに複数の企画を作成し、その中から広告主が企画を選びます。

3.コンテ制作

採用された企画をもとに、CMプランナーやディレクターが絵コンテを作成します。

絵コンテとは、企画に基づいて実際の映像の内容や流れを簡単に絵やイラストで示したものです。演出コンテとも呼ばれており、CM制作においては台本の役割も果たします。

音楽や効果音のタイミング、ナレーションやセリフなどについての説明文も入れて、広告主が完成後のCMを具体的にイメージしやすいようにすることが必要です。

絵コンテが完成したら、広告代理店や制作会社は広告主に絵コンテの説明を行います。この段階ではまだ修正が可能なので、広告主から「イメージしたものと違う」「この部分を変えてほしい」といった要望があれば、修正を加えていきます。

CM撮影が本格的に始まってから、「やっぱりここが気になるのだけど……」と変更することは困難です。コンテ制作の段階で気になる点がないか広告主によく確認しておくことが必要になります。

4.キャスティング

ターゲット層やCMのコンセプトなどに合った人をキャスティングします。例えば、主婦をターゲットとするのであればママタレントとして活躍している人、女子高生をターゲットにするのであればアイドルを起用することもひとつの手段です。

また、クールなイメージにしたいのか、爽やかなイメージにしたいのか、インパクトのあるCMを作りたいのかでも起用するキャストは異なります。

有名なタレントを起用する際は、キャスティング費用が高額になるため、予算内に収められるのか、その費用に見合う効果が得られるのかといったことも考える必要があります。

キャスティングについては、コンテ制作と同じタイミングで決めるのが望ましいです。

5.撮影準備

撮影に備えて、撮影場所の予約、撮影許可の取得、予備日の調整、撮影に必要となる道具の準備などを行います。必要であれば、撮影前に現場の下見(ロケハン)を行うこともできるでしょう。

また、当日の撮影を依頼するカメラマンや照明なども決めておきます。カメラマンについては、人物を撮るのが得意な人もいれば自然の風景を撮るのが上手な人もいるなど、得意とする映像が人によって異なります。

撮影場所や撮影するシーンなどを考慮して、ふさわしいカメラマンを選びましょう。

撮影前の最終確認としてPPMを行います。PPMは「Pre Production Meeting」の略で、撮影前に企画や演出プラン、キャスト、衣装、メイク、小道具などに関して、最終確認を行うミーティングのことです。

6.撮影

スタジオや屋外ロケーションで撮影を行います。ただし、フルアニメーションでCMを作る場合は、撮影の工程は必要ありません。

スタジオ撮影の場合、天候に関わりなく撮影を進められますが、屋外ロケーションであれば天候によっては撮影できないこともあります。その場合は、あらかじめ設けておいた予備日を使って撮影するのが一般的です。

撮影の際には広告主にも立ち会ってもらい、演出やイメージの相違がないか確認することもあります。

7.編集

CM映像の編集には、仮編集と本編集があります。

仮編集とは、撮影した映像を並べたり、順番を入れ替えたりしながらつなぎ合わせる作業です。CMの尺はさまざまですが、一般的には15秒~30秒程度なので、編集で決められた長さになるように不要なシーンを削除しなければなりません。

本編集でさらに細かな編集をするため、仮編集の段階ではざっくりと編集することになります。

仮編集が終わったら、試写(立会試写、社内試写の2通り)を行って、仕上がった仮のCMを広告主にチェックしてもらいます。

必要に応じて修正や変更を入れ、広告主からのOKが出たら本編集に進み、CMの完成です。本編集をもってCMは完成するため、これ以降は基本的に編集を行うことができません。

どうしても修正したい場合は、追加の費用が発生することになります。

8.考査・放送枠の決定

CMが完成したら、テレビ局ごとにCM素材が放送できるかを考査します。

これは取り扱う商品・サービスと、CMで使用されている表現が日本民間放送連盟の定める基準を満たしているか確認するものです。考査には2週間~3ヶ月程度かかることがありますが、考査が完了しないとテレビCMとして放送することはできません。

同時進行で、広告主と広告代理店の間で、どんな時間帯にどのテレビ局で放送するのか、どれくらいの期間放送するのか予算に合わせて決めていきます。このときに、ターゲット層を念頭に置いて、その層にアプローチしやすい時間帯を選ぶことが大切です。

9.放送・効果測定

考査が終わり、放送枠が決まって一連の流れが完了したら、制作したCMが放送されます。

CMが放送されたら終わりではありません。放送後はCMによってどのような効果が得られたのか効果測定を行います。効果測定の方法として、一般的に用いられているのが「GRP」と呼ばれる方法です。

GRPとは「延べ視聴率」のことで、テレビの平均視聴率を使ってCMの効果を測定するものです。GRPは、「平均視聴率×放送回数」で計算され、GRPが高いほどCMがより視聴率の高いテレビ番組で放送されたことを示します。

とはいえ、実際にはCMが流れている間に別のことをしている人や録画してCMは飛ばして見ている人もいるため、GRPだけでは効果を測ることはできないのが実情です。

そこで、GRPの不確定要素を補う方法として期待されているのが「GAP」という手法です。GAPは、顔認識技術で得られたデータに解析を加えて、視聴者が実際にテレビCMをどれくらい見たのかを計測することができる手法になります。ただし、GAPについてはまだ実証実験が進められている段階で、まだ確立された手法ではありません。

まとめ

CM制作の流れについて説明しました。CMは15~30秒程度の短いものであることが多いものの、ブリーフィングから放送までは大きく9つの工程があり、すべてを実践すると2~3ヶ月もの期間を要します。

簡単な仕事ではないものの、ターゲット層へ効果的なCMを制作できたときの喜びは大きく、やりがいのある仕事といえるでしょう。