美術スタッフになるには?向いている人の特徴や必要なスキルを解説!

美術スタッフとは、監督やプロデューサーなどの指示のもと、舞台や映画、テレビで使用する大道具や小道具を作る仕事です。美術スタッフになるにはどうすれば良いのでしょうか。美術スタッフのなり方や仕事内容、美術スタッフに向いている人などをご紹介します。


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美術スタッフになるには?

美術スタッフになるには、どのようなルートを選択する必要があるのでしょうか。美術スタッフのなり方について解説します。

美術系の大学や専門学校に通う

美術スタッフになるために必要な資格はありません。しかし、実力やセンスが問われる仕事のため、製図やデッサン、造形に関する技術が求められます。

必要な知識や技術を習得するためには、舞台美術やデザインを専攻できる専門学校か、美術大学に入るのが一般的です。

テレビ局や美術専門の会社に就職する

デザイン系の専門学校や美術大学で美術に関わる幅広い知識や技術を習得後、美術スタッフとして働ける会社に就職します。

一般的な就職先は、テレビ局や美術制作に特化した美術専門の会社です。

美術専門の会社には、大道具を専門にする会社や装飾をメインに手掛けている会社があります。「こういった美術に携わりたい」とある程度決めている場合は、専門や得意としている分野から就職先を絞っていくことがおすすめです。

美術スタッフの仕事内容

そもそも美術スタッフはどのような仕事をしているのでしょうか。美術スタッフを目指すにあたって知っておきたい美術スタッフの種類や仕事内容、大道具と小道具の違いについて解説します。

美術スタッフの種類

美術スタッフといっても、全員が同じ仕事をしているわけではありません。さまざまな役職があり、役職ごとに仕事内容も異なります。おおまかに、美術監督、美術助手、装飾、大道具、小道具などに区分できます。

美術監督は美術スタッフのトップに立つ役職です。美術監督は作品の美術面における統括者で、総監督とやり取りをしながらほかの美術スタッフに指示を出す、ほかの美術スタッフを監督するといった役割があります。

美術助手は、現場で作業がスムーズに進むように美術監督を補佐する仕事です。装飾や大道具などの美術スタッフは、美術監督や美術助手の指示のもと、現場で美術制作を行います。

装飾や大道具、小道具は担当によりさらに細かく区分され、小道具・備品制作準備、大道具(スタジオセット建を含む)、セット内に置く花や木を扱う生花・植木、雨や雷の演出やスモークを扱う特効などに分けられます。

大道具と小道具の違い

美術スタッフが制作するものは、大道具と小道具に大きく分けられます。大道具と小道具では、制作物の規模や準備の仕方が異なります。

大道具は、スタジオに設置される美術セットのことです。どのような美術セットにするかは、ディレクターや総合演出などの制作スタッフがデザイナーに指示します。その指示を受け、デザイナーはデザイン案を出し、固まったら大道具さんへ発注をかけて制作します。

小道具はセット内のインテリアや出演者に持たせる小物のことです。一から制作することもありますが、既製品を一部アレンジしたりそのまま使用したりするケースもあります。

美術スタッフに向いている人とは?

そもそも美術スタッフの仕事はどのような人に向いているのでしょうか。美術スタッフに向いている人の特徴を4つ解説します。

転換力や発想力に長けている

美術スタッフに求められるのは、美術監督の指示通りに作品を作り上げる力です。加えて、自身のアイデアを積極的に提案する力もあると仕事の幅も広がりやすいです。

なぜなら、美術監督の指示がいつも明確であるとは限らないからです。ある程度のイメージだけを伝えられるケースもあります。その場合は、どのような制作物が求められているのか、美術スタッフ自身が想像力を働かせて考える必要があるでしょう。

また現場では、番組制作をメインで動かすディレクター、もしくはディレクターの指示を受けたADから、無茶な依頼を受けることもあります。例えば、「人体に影響が出ない程度で人を高速回転させる装置を作りたい」「コピー機の中をくり抜き人が隠れられるようにしたい」などです。

このような無茶に思える依頼でも、美術スタッフは発想力や転換力を駆使して、要望に応えられる制作物を作らなければなりません。

人が高速回転できる装置を制作する場合は、回転速度のリサーチは制作側が行い、美術スタッフは求められる速度が出せる装置を制作します。

体力や精神力がある

美術スタッフには体力や精神力が必要不可欠です。

美術スタッフはスケジュールに合わせて、大道具や小道具を完成させなければなりません。そのため、制作スケジュールによっては長時間労働になることもあります。期限が近くなると、十分な睡眠時間が取れないことも少なくありません。

また、作業中は集中力を持続させることも必要です。ハードなスケジュールに追われながらも細かな作業に取り組まなくてはならない環境では、技術だけでなく体力や精神力も重要です。

コミュニケーション能力がある

社交的で誰とでもコミュニケーションを取れる人も、美術スタッフに向いているといえます。

美術スタッフが関わる映像や舞台の現場では、ひとつの作品をチームで作り上げていきます。作品に携わる多くのスタッフと連携を取り、スムーズに制作を進めるためにはコミュニケーション能力が必要です。

モノ作りやデザインが好き

先にも紹介したように、美術スタッフはスケジュールに間に合うように大道具や小道具の制作を進めなければならないため、体力や精神力が必要な仕事です。

長時間の作業など苦しい部分を乗りこえて美術スタッフの仕事を続けていくには、モノ作りやデザインが好きだという純粋な動機も大切です。

美術スタッフは、人の手で作り出す仕事にやりがいを感じられる人、デザインから材料集め、制作まですべての美術制作の工程を楽しめる人に向いています。

美術スタッフの年収・給与事情

美術スタッフとして働く場合、どの程度の年収が見込めるのでしょうか。職業情報提供サイト「jobtag」によると、令和4年賃金構造基本統計調査をもとにした舞台美術スタッフの平均年収は約489万円でした。

ただし、この金額は、あくまで舞台に関わる美術スタッフの平均年収です。舞台以外の美術スタッフの平均年収とは少し異なるかもしれませんが、ある程度の目安として参考にしてください。

なお、アシスタントとして経験を積み、ポジションを上げていくことで年収も上がっていきます。

参考:舞台美術スタッフ|職業情報提供サイト jobtag

美術スタッフのキャリア形成

美術スタッフのキャリアパスは、主に3つあります。

ひとつは経験と実績を重ねて、美術専門会社の美術スタッフのトップである美術監督を目指すことです。

また、特定の分野の知識や技術を極め、その分野のスペシャリストとして活躍するのも良いでしょう。

美術スタッフとしての経験を重ね人脈を得たのちに、フリーランスとして独立するという選択肢もあります。語学を学んで、日本だけでなく、海外の映画作品やドラマ作品などに携わる道もあります。

いずれの道を選ぶにしても、美術に関する新しい知識を身に付け、多くの経験を通して美術スタッフとして高い技術を習得することが重要です。

まとめ

美術スタッフになるには、デザインの専門学校や美術大学で美術に関する知識や技術を習得して、テレビ局や美術専門の会社に就職する方法が一般的です。

美術スタッフは、美術制作を通して映画やドラマ、舞台などさまざまな作品に携わる仕事で、役割が細かく分けられています。実績や経験を積み、ポジションを上げたりフリーランスとして独立したりして、年収を上げていくことも可能です。

美術スタッフを目指す場合は、まずアシスタントとして経験を重ね、必要な知識や技術の基礎固めをしていくことから始めると良いでしょう。