テレビ番組制作の裏方「AD」の仕事内容を徹底解説!

ADは現場ディレクターのアシスタントとして、テレビ番組の制作現場で活躍する仕事です。業務範囲は幅広く、担当する番組によっても1日のスケジュールが変化します。番組スタッフ以外に、取材先の方や演者の方と関わる機会もあるため、コミュニケーション能力や臨機応変な対応力を求められるのが特徴です。 今回は、テレビ制作の裏方であるADの仕事内容を詳しく解説します。


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ADは番組制作における縁の下の力持ち

ADはアシスタント・ディレクターの略です。その名のとおり、番組制作の現場監督であるディレクターを補佐します。まずはADとして制作現場で経験を積んでから、ディレクターに昇格するケースが多いため、ADはディレクターを目指す方のほとんどが通る道です。

ADの仕事内容は多岐にわたり、企画会議から制作現場、編集、オンエアまで、局面に合わせて多くの業務をこなします。業務の中には、ロケの準備や編集補助といった制作に直接関わるものから、スタッフ・出演者の弁当手配といった雑用も含まれます。

番組制作が滞りなく進むかはADの働きぶりが左右するといわれ、ADは番組制作の縁の下の力持ちのような存在です。

業務はとても幅広い!ADの仕事内容

ADの業務は、番組の企画段階から制作、オンエアまで広範囲に及びます。ここではADの仕事内容を具体的に見ていきます。

1.企画会議

番組の企画会議では、ディレクターや構成作家が番組の構成を決めます。ADは、以下のような業務を担当します。

・会議資料を作成する
・(対面で会議を行う場合)会場となるテレビ局や制作会社の会議室を予約する
・(リモート会議の場合)Web会議システムのURLを発行し、共有する
・会議資料や筆記用具、案内バリ(番組名や会議名、日時などを書いた張り紙)、飲み物や弁当の手配など、当日に必要なものを準備する
・出席者に会議の日時と場所を連絡する
・会議当日にリマインド連絡をする

このほかにも、会議中に飛び交う意見をホワイトボードに板書したり、会議の議事録を作ったりします。会議中の話の流れで話題になった内容の映像や記事などの参考資料を、その場で調べて共有も行うなど、その役目は多岐にわたります。

2.リサーチ

番組制作における「リサーチ」とは下調べのことです。企画会議に使用するネタや、企画会議で決まった番組制作に必要な情報をリサーチします。どちらもADの重要な仕事です。

企画会議前には、番組に合うネタやロケ地の候補、出演者のプロフィールなどをリサーチします。その後、リサーチした内容で資料作成を行うこともADの業務です。

企画内容決定後、簡単なものや番組制作のうえでスタッフが知っておくべき内容は、勉強も兼ねてADがリサーチします。リサーチが難しいものは、専門会社に発注をかけることもあります。

リサーチの方法はネットや書籍、新聞、テレビ局のアーカイブセンター(映像のライブラリー)を活用するほか、有識者への直接取材が挙げられます。

3.ロケハン

「ロケハン」は「ロケーションハンティング」の略称で、ロケ地を選ぶ作業のことです。具体的には、以下のような作業を行います。

・インターネットなどでロケ候補地に関する情報収集を行う
・ロケ候補地に足を運び、撮影環境や移動時間、導線などをカメラに記録しながらチェックする
・商業施設などの場合は企画書を提出し、撮影交渉から、申請・許可取りなどを行う
・飲食店の場合は実際に商品を購入して、味や提供時間をチェックする
・ロケ地の決定後 、追加のリサーチなどを行い、ディレクターとともにカメラ割りや照明の有無を確認する

4.仕込み

仕込み」とは、番組のロケや収録前の準備のことで、ADが一手に引き受けます。具体的には以下のような作業を指します。

【ロケ・スタジオ共通】
・技術(追加機材なども含む)の発注
・スケジュール作成
・カンペの作成
・台本、資料等の印刷
・スタッフや出演者の弁当の手配
・衣装・小道具の手配
・D、AP、Pなどの各所への共有・連絡
・機材、備品などの運搬
・収録メディアの管理

【ロケ】
・道路の使用許可や店の撮影許可
・宿泊先や移動手段の手配
・車両の発注
・備品(傘、除菌グッズ、防暑・防寒グッズなど)の準備

【スタジオ】
・スタジオ観客の手配
・スタジオで火を使ったり(ドッキリなど)、スタジオ外待機室でタバコを吸ったりする場合は、管轄の消防署に申請を出す
・番組内で出演者に食事を提供する場合は「フーディー」とよばれる料理担当者を手配する

仕込みは番組を進行するうえでも非常に重要な仕事です。細かい内容までもとめられるため、ADとしての腕の見せ所でもあります。

5.ロケ

ロケの種類には、街頭インタビューから宿泊を伴うものまで内容はさまざまです。ADはロケの内容に応じて、撮影が滞りなく進むように動きます。たとえば、以下のような仕事があります。

・お弁当の手配
・撮影中の通行人整理
・荷物持ち
・技術の補佐
・ロケ先が複数ある場合、次のロケ先に押し巻き(予定より時間がかかっている=押し、予定より進行が速い場合=巻き)のご連絡を入れてスケジュールを調整する
・街頭インタビューに登場してもらう人に、番組出演承諾書への記入をお願いする
・カメラを回す(街頭インタビューではADが撮影することがある)
・インサート撮影(後日行う場合が多い)

ロケは制作スタッフや出演者、技術スタッフなど多くの方が関わるため、スケジュール管理が非常に重要です。想定どおりにいかないこともあるため、そのたびに臨機応変な対応が必要となります。

6.スタジオ収録

スタジオ収録は大勢のタレントさんがスケジュールを合わせて集まるため、基本は1回きりの勝負です。ADの仕事には以下のようなものがあります。

・サブ(副調整室)の準備(資料や筆記用具の用意。収録メディアの運搬など)
・カメリハ(カメラリハーサル)では、出演者の名前が書かれた札をつけて、出演者と同じ動きをとり、カメラマンが立ち位置やピントを確認できるようにする
・出演者の楽屋を準備する
・観客に番組内容を説明する「前説」を行う
・収録時、出演者に出番を知らせる
・収録中はフロアでインカムからの指示に対応する
・収録中に小物出しを行う
・収録後速やかに各所のバラシ(片付け)を行う

番組を盛り上げるために、AD自ら大きな声で笑うことも大切な仕事です。各スタッフと連携をとりながら臨機応変に対応することが、スムーズな収録につながります。

7.編集

番組を収録したあとは編集作業です。ADはここで編集補助として携わります。映像の編集作業には2種類あり、「オフライン編集」と「オンライン編集」です。

・オフライン編集
収録した素材をカットしたり繋いだりして放送時間内にまとめる作業です。作業そのものはディレクターが中心となって行います。ADはディレクターがすぐに編集作業に取りかかれるように、収録素材をハードディスクに取り込んでおきます。

・オンライン編集
オンライン編集とは、オフライン編集した映像データをもとに、テロップやCGなどの追加素材を入れて放送用テープを完成させる作業です。主に外部の編集所で行われており、ディレクターが編集所のエディターに指示を出して編集作業を進めます。

ADは出演者やお店の名前などに間違いがないか、編集モニターを見ながらチェックします。また、「自分ならどう編集するか」といった観点でディレクターがエディターに出す指示を見て、編集のノウハウを実践で学びます。

オンライン編集が終わると、BGMや効果音、ナレーションを入れる「MA」という作業を行います。ナレーターにナレーション原稿や水を用意するのもADの仕事です。その後、それぞれ完成した画と音を一つにまとめて、ようやく番組が完成します。

8.オンエアチェック

完成した放送用テープをテレビ局に納品するのもADの仕事です。また、テレビ局にテープを渡すだけでなく、字幕を作成する部署や番組の宣伝・編成を行う部署などにもデータを納品します。

放送時にはテレビでオンエアチェックを行います。放送前には、取材に協力してくださった方々へオンエアの連絡を入れます。

ADの仕事はハード!その分やりがいも大きい

ADは「勤務時間が不規則でハードな仕事」というイメージを持たれやすい職業です。最近は休日を曜日固定にしている企業も多いものの、休日にロケが入ると出勤しなければなりません。

また、報道担当になると、有事の際は職場に急行します。一方、自分が担当する仕事が終わると急に暇になることも。

このように生活リズムが一定せず、忙しいときとそうでないときの差が大きいことが、ハードな仕事といわれる一因です。

しかし、オンエアされた番組のエンドロールに自分の名前を見つけたときの達成感は、何物にも代えがたい喜びです。ADでなければできない経験も多く、現場でディレクションのスキルを身に付けることができるのは大きなメリットでしょう。テレビ好きの方にとっては、非常にやりがいを感じる仕事ではないでしょうか。

また、AD時代を乗り越えたあとはディレクターやプロデューサーの道を目指すことができます。番組制作における活躍の場が広がり、自分の手で番組をつくる実感がより得られるでしょう。

ADとしてのやりがいは、以下の記事でも詳しく説明しています。
テレビADの仕事が「きつい」と言われる理由とは?実態を紹介!

まとめ

番組の企画段階から収録、編集、オンエア後まで、ADはディレクターの下でさまざまな業務を担います。収録映像の編集アシスタントといった番組制作の根幹的な業務もあれば、ロケ地の交通整理や出演者・スタッフの弁当発注のような一見雑務と思えるような業務も含まれますが、どの業務も良い番組作りには欠かせません。

ADを数年間経験後、実力が認められれば制作現場の監督であるディレクターへ昇格します。テレビ番組の制作に興味がある方は、ぜひADを目指してください。