テレビ業界の今後はどうなる?現状と将来性について解説

近年、インターネット動画サービスの拡大による若年層を中心としたテレビ離れが顕著です。テレビ業界の規模や広告収入は減少傾向にありますが、将来性が期待できる要素も続々と生まれています。 今回は、テレビ業界の現状と課題を踏まえたうえで、業界の将来性について解説します。


この記事は約6分で読み終わります。

テレビ業界の現状

インターネット動画サービスの拡大により、テレビ業界は将来性が期待できないといわれることがあります。まず、テレビ業界の現状やその背景についてご紹介します。

業界規模や広告費は減少傾向

先述したように、テレビ業界の業界規模や広告費は減少傾向にあります。地上基幹放送事業者の売上高は、2016年ごろをピークに減少傾向がみられます。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて大きく落ち込んだため、2021年は前年より回復したものの、長期的な減少傾向には変化ありません。

テレビ業界の主な収入源である広告費も同様に減少傾向にあります。

テレビ業界が縮小しつつある背景

テレビ業界の縮小の背景にあるのが若年層のテレビ離れです。近年、インターネットの動画共有サービスの台頭により、テレビを見ない若年層が増えました。購買意欲の高い10代~50代の視聴率が低下しているため、企業がテレビCMを打たなくなっているのです。代わりに、インターネット広告市場は急速に成長しています。

このように、テレビ業界は厳しい状況に置かれていますが、世帯視聴率が低くても購買層の個人視聴率が高ければ番組は継続できます。今後、購買層の視聴をいかに獲得するかが重要になるといえます。

テレビ業界が直面している課題

業界の縮小とあわせて、直面している課題もあります。中でも大きい課題が制作会社の賃金問題と業界特有の体制です。

制作会社の賃金問題がある

番組制作に携わるのは、テレビ局のスタッフだけではありません。外部の番組制作会社のスタッフも協力するのが一般的です。

しかし、テレビ局スタッフと番組制作会社のスタッフでは、賃金や待遇面で差があります。テレビ局スタッフの年収は20代後半で平均700万円ですが、制作会社のスタッフは、たとえば30代ADであれば300万円程度です 。この格差をいかに解消するかが業界の課題となっています。

昭和の体制が残っている

また、テレビ業界では長時間労働やDX化が進んでいない業務など、昭和の古い企業体質から脱却できていないという課題も残っています。

ただし、近年では労働時間の管理や多様な働き方が可能になるなど、労働環境の改善の取り組みも見られています。一時はパワハラ問題が取り立たされることもありましたが、現在ではほとんどなくなっています。

テレビ業界の今後は?現状を打開するための動きとは

厳しい環境にあるテレビ業界ですが、現状を打開するための動きも見られます。ここからは、テレビ業界が将来に向けて取り組んでいる取り組みや最新の業界動向について解説します。

動画配信サービスの活用

インターネットでの動画配信が台頭するなか、テレビ局は地上波だけでなくインターネット上のコンテンツ配信も開始しています。

インターネットで配信は、テレビを見ない層を含めた幅広い視聴者に気軽に映像コンテンツを楽しんでもらうことができるのがメリットです。

個々の番組のサブスクリプション配信のほか、テレビ視聴アプリでのリアルタイム番組配信や過去放送のオンデマンド配信などを行い、新たな視聴者層の獲得に取り組んでいます。

このほか、テレビでの未公開映像や予告を動画配信サイトで行い、番組のファン作りも行われています。

働き方改革の推進

番組制作現場においては、かつて長時間労働が当たり前で、収録前やOA前は帰宅できないというADも多くいました。しかし、働き方改革により労働環境が見直され、長時間労働の是正や休暇取得の奨励が行われるようになっています。

現在では定時で業務を終了する流れができつつあります。実際は、業務が残っていると定時を超えたり業務を持ち帰ったりする事例があることは事実です。現場の意識は大きく変わっており、以前のような長時間労働という空気はなくなりました。

あわせて、テレワークや短時間勤務など、多様な働き方の導入も進んでおり、ワークライフバランスの実現に近づいています。

コンテンツ制作力の維持・向上

テレビ業界は映像コンテンツの企画力や映像制作技術において、ネット企業よりも高い技術があります。

この高いコンテンツ制作力の維持・向上に取り組むことでネット企業が制作する動画との差別化を実現し、さまざまなマネタイズを行っています。ドラマのDVD・ブルーレイの販売のほか、ネットフリックスやAmazonプライムなどの動画配信サイトにコンテンツを配信し、配信料を獲得するというビジネスモデルも確立しました。

テレビ番組という枠に囚われず、コンテンツ制作という形で新しい時代を目指すのが業界のスタンダードとなりつつあります。

視聴者参加型コンテンツの強化

クイズやアンケートに回答する「いいね」ができるなどの視聴者と双方向コミュニケーションを増やす取り組みも行われています。

視聴者参加型の番組にすることで、視聴者を惹き付け、離脱を防ぐ効果が期待できます。今後アプリとの連携なども期待されているようです。

SNSでの情報発信

近年では、番組がSNSでの情報発信や連動を行うのも一般化しています。SNSで情報を発信すれば、ユーザーはあらゆる情報を好きなときに得られます。また、視聴しながらコメントができるようにすることで双方向コミュニケーションを実現するほか、番組を見ていない人にも興味を持ってもらえる機会を生み出しています。

また、若年層の間では動画配信サイトにはない「リアルタイムでしか見られない」というテレビの魅力が注目されつつあります。SNSによる実況も、この流れを後押ししています。

なお、番組の公式SNSの投稿内容はプロデューサー やディレクターが考えますが、運用管理はADが行うことも多いです。業界を目指すなら、投稿時にミスしないようSNSの使用に今のうちから慣れておくと良いです。

非テレビ事業への参入

大手テレビメディアはすでに、非テレビ業界への参入も進めています。たとえば、ビル開発やホテル運営、イベント開催などの非テレビ事業には参入の余地があり、放送以外にも事業を多角化させています。

また、非テレビ事業のイベントや舞台に関わったり、メタバース分野へと進出したりなど、各局がさまざまなアプローチを試みています。

需要は今後も続く!テレビ業界が安泰といえる理由

テレビ業界は若年層のテレビ離れにより縮小傾向が見られるものの、今後も需要が続くと考えられます。

その理由として挙げられるのが、超高齢化社会の進行です。現在、インターネットやスマートフォンを自由に使いこなせない高齢者にテレビ需要があるように、今後も高齢者層向けのテレビ需要は継続すると考えられます。

また、テレビ局 には「放送免許」というアドバンテージがあります。テレビ媒体においては競合他社が現れにくく、ほぼ独占状態を維持できます。乱立する動画配信サービスとは対照的です。

そして、制作現場においては、映像自体に触れる機会は増大しています。番組制作に限らずネットフリックス、YouTube、街中やスマホ使用中に流れる映像広告などの制作需要は多くあります。

テレビ番組をテレビという媒体を通さずにもっと手軽に視聴できるシステムやマネタイズの工夫を行うことで、業界は残っていくでしょう。

まとめ

テレビ業界はインターネット動画配信の台頭により将来性を心配する声もあります。しかし、コンテンツの視聴はテレビのみに限られません。動画サイトをはじめ、サブスクリプションなど新たな配信方法により視聴者を獲得することが可能です。

また、高齢化社会の進行が続くので、テレビ自体も一定の需要が続くと見込まれており、将来性を危惧することはないと考えられます。業界の衰退への不安から、テレビ業界を諦める必要はありません。