【ドラマ好きADが選出】まるでドラマな印象的なCM集|映像表現のすごさを解説

単なる広告を超えた「短編ドラマ型CM」が今なぜ増えているのか?サントリー生ビールやJR東海、カロリーメイトなど、ドラマ好きADが選ぶエモーショナルなCM5選をピックアップ。セルフで感情を説明しすぎない演出や音楽の連動など、短尺で人の心を動かす映像表現の裏側を徹底解説します!


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みなさんは思わず見たくなってしまうCMはありませんか?

筆者はサントリーの宇宙人ジョーンズシリーズが好きで、新CMが出ると必ず見てしまいます。
最近は、CMをテレビではなくYouTubeで見ることがほとんどです。

え?わざわざCMをYouTubeで見るの?と思う人もいるかもしれません。
しかし、YouTubeでわざわざ見るほど、ドラマのような映像の質感でストーリー性が高く、数分で感動・共感できる作品(ここではあえてCMではなく作品といいます)がたくさんアップされているからです。

ではなぜ、ドラマのような印象的なCMが増えているのでしょうか。
本記事では、その背景を考察したうえで、ドラマ好きなADの視点から特に印象に残るCM5選を紹介し、それらに共通する映像表現の工夫について解説していきます。

なぜドラマのようなCMが増えているのか

ドラマ仕立てのCMと聞くと、auの「三太郎」シリーズソフトバンクの「白戸家」シリーズを思い浮かべる人が多いと思います。

これらは長年にわたり親しまれてきた代表的なCMですが、特にここ数年は、こうした継続型シリーズに限らず、1本ごとに物語として成立する「短編ドラマ型CM」が増加しています。

従来のCMは、限られた時間の中で商品やサービスの特徴を端的に伝えることが重視されていました
しかし現在では、視聴者の関心を引きつけ、最後まで見てもらうこと自体が重要になっています。
そのため、恋愛や家族、日常の一コマといった
共感性の高いテーマを取り入れ、まるでドラマのように感情に訴えかける構成が多く見られるようになりました。

この背景には、YouTubeやSNSの普及により、視聴者が自らコンテンツを選択する時代へと変化したからと考えられます。
さらに、テレビでエンタメコンテンツを視聴する機会自体が減少していることも大きな要因と考えます。
従来は番組の中で自然と広告に触れる機会がありましたが、現在はそうした接触機会が減少しています。

少し余談になりますが、みなさんは自宅にテレビを置いていますか?
特に一人暮らしの方は、テレビを置かないという家も増えたのではないでしょうか(特にテレビ業界以外の友人は、テレビを持たず、パソコンやスマホでTVer・Netflixを利用して番組を見ていることがほとんどです)。

そのため企業は、広告そのものを“エンタメとして成立させる”傾向にあり、視聴者に選ばれるコンテンツとしての質が求められるようになりました。
こうした流れの中で、ドラマ仕立てのCMは
広告でありながらも一つの作品として楽しめる手法として広がっています。

ドラマ好きADが選ぶ印象的なCM5選

では、ドラマ好きADによるドラマみたいで印象的なCMを5つご紹介します。
各CMの広告会社(広告代理店)と制作会社も掲載しておりますので、参考にしてみてください。

広告代理店と制作会社の違いについて詳しく知りたい人は以下の記事をご覧ください!
🔻
【CM業界】広告代理店と広告制作会社の違い
また、CMの制作について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください!
🔻あのCMってどこの制作会社が作ってるの?
🔻CM制作の流れは?制作にかかる期間や全体のスケジュール感を解説

『沁みるあゆみさん(勇気)』|サントリー生ビール 

★ストーリー

瀬戸内海に面した愛媛県が舞台。撮影も全て愛媛県で行った。
河合優実さんは青果市場で働く若手社員・今野あゆみ役を演じる。
その日の職場で自分が勇気を振り絞ったとある行動を回想し、満足そうに「サントリー生ビール」を飲むシーンを演じた。

★ここが印象的

職場で感じる些細なモヤモヤや、「なんか微妙かも」という感情を表情に出すのがさすが河合さんだなと感じます!
ビールのCMだけど職場でのモヤモヤを演出することで、視聴者との共通点で共感を得るところが「このCMを見たい」と思わせるポイントだと思います!
音楽は斉藤和義さんがカバーした「上を向いて歩こう」。ロック調にアレンジされていてかっこいいです!
仕事終わりに曲を聴きながら「ビール飲もうぜ!」と促してますね(笑)

 

『もうひとつのクレヨンしんちゃんシーズン2 第1話「春日部にお引越しだゾ!」篇』コカ・コーラ やかんの麦茶

★ストーリー

2024年から開始され、話題となった「クレヨンしんちゃん」の実写化ショートムービー「やかんの家族だゾ!」のシーズン2。

都心で働きながら一人暮らしをしていたしんのすけ(高橋文哉さん)が、異動をきっかけに地元・春日部市の実家へ戻ることに。
迎えた引越し当日、しんのすけの帰りが待ちきれない家族は全員で車に乗り込み、しんのすけを迎えにやって来る。いつもの家族のやりとりで、野原家らしい“めんどうだけど、愛おしい”家族の日常が描かれる。
野原家の父・ひろしを原田泰造さん、母・みさえを麻生久美子さん、妹・ひまわりを畑芽育さんが演じる

★ここが印象的

高橋文哉さん演じるしんのすけが大人として描かれている一方で、言葉尻や何気ない発言の端々に、アニメの5歳のしんのすけらしさを感じさせる点が印象的です。
落ち着いたトーンでありながらも、どこか抜けていたり、「〇〇だゾ〜」と言ったり、自然とアニメ版と変わっていないところに喜びを感じるのではないでしょうか。(筆者もその一人です!)
細かな表現によって、“あのしんのすけがそのまま大人になった”というアニメファンにとっても納得感のあるキャラクター演出になっていると感じました。

 

『東海道新幹線60周年記念CM 「60年分の会いにいこう」編』|JR東海

広告会社:電通JR東海エージェンシー
制作会社:SUPERMARKET

★ストーリー

2024年10月1日で開業60周年を迎えた東海道新幹線。

暗がりに並んだ歴代の新幹線を見つめる吉高由里子さんの映像から始まり、歴代の車両とともに車内チャイムが流れる
場面が切り替わると、
これまで乗せてきたお客様の思い出を、写真や動画で振り返る。
車内風景は徐々に現代へと近づき、修学旅行や家族旅行から出張まで、さまざまな想いを乗せて走り抜いてきた60年を描く

★ここが印象的

ドラマ仕立てではないですが、普段何気なく乗っている新幹線にも、乗った人の数だけそれぞれの思いがあるのだと考えさせられ、選びました。
お客様から寄せられた写真や動画をCMに使用することで、この60年間で進歩した新幹線のスピードや利便性そのものよりも、新幹線を使って誰かに「会いにいく」ことへの価値を強く感じさせている点が印象的です。
単なる利便性の訴求ではなく、人々の記憶や感情に寄り添うことでブランドの価値を伝えている点が、このCMの最も印象的なポイントだと感じました。

 

『「見えないもの」篇  』|大塚製薬 カロリーメイト

広告会社:博報堂/ catch / ENOAD
制作会社:AOI Pro.

★ストーリー

2012年から続くカロリーメイトの受験生応援CMシリーズ。
その中でも特に印象的だったのが、2020年に放映された「見えないもの」篇です。
新型コロナウイルスの影響で今まで通りの学校生活を送ることができず、授業はリモートに、部活の大会も中止に……。
CMではそんな大きな逆境の中で、時に心が折れそうになりながらもひたむきに頑張る受験生(加藤清史郎さん)と、不安を抱える生徒を思い、どこまでも寄り添い続ける先生(東京03・飯塚悟志さん)との絆がリアルに描かれています。

★ここが印象的

毎年受験シーズンになり放送が始まると「泣ける」「感動する」と話題に。
ここ数年のコロナ禍受験制度の多様化AIを使った学習など、世の中の変化を反映させたCMが印象的で、受験生を中心に共感を呼んでいます。
使われなかった体育祭や文化祭の看板・誰もいない教室などのインサートが挟まれることで、コロナ禍で変化せざるをえなかった学校をより想起させている点が印象的です。
音楽は森⼭直太朗さんの「さくら」を合唱バージョンで起⽤しており、歌詞がCMの世界感と重なり、視聴者の感情を引き立てていると思います。

 

『「育休パパ」篇  』|東京ガス

広告会社:電通
制作会社:電通クリエーティブXKEY pro

★ストーリー

東京ガスが2008年より放映しているTVCM『家族の絆』シリーズの新篇です。

このCMは「理想(夢)」と「現実」、2つの育休生活を対比させる構成になっています。
会社で育休を取得した主人公は、上司や同僚に応援されながら、明るい気持ちで育休生活をスタート。キャラ弁作りも子どもの送り迎えもそつなくこなし、ママとも笑い合う理想の毎日を送ります。
ところが目が覚めると、そこは現実の世界。理想とは裏腹に、育休取得時に上司や同僚から不安そうな顔をされ、お弁当作りはうまくいかず、子どもにも手を焼く波乱の一日に。心身ともに疲れ果てながらも、夜、ママとのやり取りを通じてじんわり心温まるラストが待っています。

★ここが印象的

ガス会社のCMでありながら、ガスそのものを前面に押し出していない点です。
料理や洗濯といった日常のシーンを通して、家庭で過ごす時間や家族との関わりを表現していると思います。
ガスは“見せるもの”ではなく、“生活を支える当たり前の存在”として表現されており、直接的な機能訴求ではなく、暮らしの豊かさや安心感といった価値を伝える構成になっていると感じました。
また、育児や家事がうまくいかない場面や、戸惑いながら向き合う姿をあえて見せることで、「理想の父親像」ではなく、等身大のリアルな父親像として共感を生み出していると言えます。

なぜこのCMは心に残るのか?映像表現の共通点

印象に残るCMの共通点は以下の5つが挙げられると考えます。

① 日常の切り取り方がリアル
特別な出来事ではなく、誰にでも起こり得る日常の一瞬を切り取ることで、視聴者が自分の経験と重ねやすくなっている。

② 感情を“説明しすぎない”演出
セリフやナレーションで伝えきらず、出演者の表情や間で感情を表現している。

③ 音楽と映像の強い連動
楽曲の歌詞やメロディと映像がリンクすることで、より深い没入感を生んでいる。

④ 商品の“見せ方”が間接的
商品を前面に押し出すのではなく、生活の中に自然に溶け込ませることで、広告感を薄めつつブランドイメージを高めている。

⑤ 社会的背景を反映している
コロナ禍や価値観の変化など、その時代特有の空気を取り入れることで、「自分事」として捉えてもらえるようにしている。

テレビ制作にも通じる“短尺で伝える力”

テレビ制作の現場で、ADは経験を積むにつれて次週予告やSNSで配信するPR動画を作成することを任されます
60秒や30秒といった限られた尺で視聴者に本編をみてもらえるように構成をしなければいけません

ADに興味を持っている人は、CMを単なる広告としてではなく、「短い時間でどのように視聴者の興味を引きつけているのか」という視点で見ることが重要だと感じます。
限られた尺の中で、どのカットを使い、どの順番で見せ、どこで感情を動かすのかといった構成の工夫は、次週予告やPR動画制作にも直結する要素です。

まとめ

今回は、CMの中でも特にドラマのような印象的なCMを紹介し、その表現や構成の工夫について考察しましたがいかがでしたでしょうか。

CMは限られた時間の中で物語や感情を伝える、非常に完成度の高いコンテンツです。
普段は何気なく見過ごしてしまいがちですが、見方を変えることで多くの学びを得ることができます。

映像業界を志望する人にとっても、CMは“短尺で伝える力”を学ぶうえで非常に有効な教材になると思うので、積極的にチェックしてみてください。