テレビ業界で働く人のテレビの観方
皆さんは普段何気なくテレビを観ていることも多いと思います。筆者は、実際にテレビの制作現場でADやAPを経験してきましたが、実際にテレビの現場で働き始めると、今までとは全く違ったテレビの観方をするようになります。意識してそうしているわけではなく、どうしても気になってしまう、目に留まってしまうポイントがあります。そこで今回は、実際にテレビの制作現場でADやAPを経験してきた「作り手目線」としてのテレビの観方のポイントを紹介していきます。
作り手目線のテレビの観方【気になるポイント】
テロップ
【デザイン・フォント・色が気になる】
ついつい気にしてしまうのが、テロップの見やすさです。
「このテロップ、フォントや色が読みやすいな…」だったり、「このテロップなんか見にくいな…」という感じで注目してしまいます。ディレクターは、編集所でいかに見やすく、分かりやすくテロップを入れるかを考えて作業しています。実際にそれを形にしていくのは編集所のエディターです。色やエッジの有無、見え方など様々な工夫を凝らして作り込んでいるので、その様子を間近に見てきたからこそ、ついつい気になってしまうポイントです。
バラエティー番組でよくあるのですが、出演者の発言をテロップでフォローしているときに、言っていることとテロップの文言が違うとついつい気になってしまいます。これもディレクターによって、出演者の発言が分かりにくかったりした場合に、少し内容を変えてテロップを入れたりすることがあるのですが、あまりに違うと気になってしまいます。皆さんも感じたことがあるのではないでしょうか?
【漢字間違い、日本語間違い】
テレビの制作現場では、常に「正しい日本語」を意識して作業しています。例えば、出演者の「ら抜き言葉」はテロップでフォローする際には、きちんと正して入れていますし、また、難しい漢字はあえてひらがなで入れて読みやすくしたりと工夫もしています。だからこそ、漢字の間違いや送り仮名の間違いなどを発見しやすいのかもしれません。
例えば、以下は、間違いやすい漢字や言葉です。
・ついきゅう:「追求」、「追及」、「追究」は意味が異なります。
性能のついきゅうは「追求」、犯人をついきゅうするは「追及」、学問は「追究」です。
・ほしょう:「保証」、「保障」、「補償」は意味が異なります。
製品の品質だと「保証」、「保障」は地位や権利などを守ることで「社会保障」などがその例です。「補償」は損失などを埋め合わせすることで、損害保険の説明の際などによく出てきます。
・せいさく:「製作」は物をつくること、「制作」は芸術作品などをつくることです。
テレビ番組などをつくる場合は「制作」ですが、工業製品や精密機械、器具などの場合だと「製作」になります。
・しゅぎょう:仏道に努めたり、学業や技芸を磨くために努力する場合には「修行」を使用し ます。学問や技芸を習って身につける場合には「修業」となります。
・シミュレーション:シュミレーションとなりがちなので注意が必要です。
発音するときには「シュミ」と読む方が多いと思いますが、英単語(simulation)でみると分かりやすいのですが、「シミュ」が正しいです。
・「おぎ」と「はぎ」:おぎ「荻」とはぎ「萩」は漢字だけ見ていると混同しがちなので注意 が必要です。
【サイドテロップ】
テレビ画面のサイド(四隅)に表示されるテロップのことを「サイドテロップ」と呼びます。
サイドテロップの表示場所や内容は、番組によって異なりますが、番組名やコーナータイトル、その時放送されている内容について表示するのが一般的です。
そのデザインや入れ方にも注目しがちです。企画内容があまりにも長かったり、分かりにくかったりすると気になってしまいますし、面白い入れ方やオシャレな入れ方、見やすい入れ方は参考にしたりもします。
エンドロール
番組の最後に流れる「エンドロール」からは、様々な情報が読み取れます。
出演者はもちろん、番組スタッフも記載されていて、大体の場合、自分の担当回の放送では、名前順が一番上になっていたりします。なので、知っているチームの番組だと、「今回はこのディレクターさんの担当回だったのか!」ということも分かったりします。あとは出演者の着ている衣装のブランドロゴも載っているので、自分の知っている服のブランドだと、「あのタレントさんが着ていた服かな?」と予想したり、制作会社の名前も記載されているので、「この番組はここの制作会社で作っているんだな」というところをチェックしたりしています。撮影協力として、撮影場所も記載されていたりもするので、「このロケ地、なんか見たことあると思ったら地元だった!」なんてこともよくあります。
ナレーター
皆さんはあまり意識して聞いていないかもしれませんが、業界の人は、番組の「ナレーター」は結構気になるポイントです。その番組のテイストに合っているかも気にしてしまいますし、自分の知っているナレーターさんで、普段の声色とは違ったりすると、「こんな声も出せるのか!」と驚くこともあります。あとは単純に、「このナレーターさん、この番組もこの番組もやっていて忙しいな…」なんてことも思ったりします。また、最近は芸人さんや俳優さんがナレーターを務める番組も多いので、「この芸人さんの声いいな」、「この俳優さん、ナレーターもやってくれるんだ!」という目線でもチェックしています。実際に、「ん?この声は!と思い、エンドロールで名前をお見かけしたので、オファーしました!」と、別の番組の担当者から、声がかかったという俳優さんもいたそうなので、やはり業界の人は常に気にしているポイントだと思います。
クレジット表記
クレジット表記(コピーライト表示、著作権表示)とは、その素材の作者・著作権者・提供者を表す表記で、テレビ番組でも何か素材を使用する際には必ず表記しています。なので、何かの映像で「映像提供:@@」と表記されていたら、「この映像は@@に問い合わせをしたら使用できるのか!」とチェックしたり、あまりにも長いクレジット表記だったりすると、「この素材を使用する際には、このクレジット表記をいれなきゃいけないのか…」と気にしたりしてしまいます。
物撮り撮影
食べ物や商品などの撮影を「物撮り」と呼びます。最近は、テレビの撮影でも、食べ物などの物撮りの際に一眼レフを使用したり、画質やクオリティーにこだわる番組が増えてきています。だからこそ、美味しそうな物撮りの映像だと、どのカメラを使用しているのか気になります。また、撮り方に関しても、食べ物の撮影の際、制作スタッフは、湯気や鉄板の音などを最大限に引き出して、いかに美味しそうにみせるかにこだわって撮影をしています。また、スタッフがお箸などで食べ物を持ち上げて撮影するのを「箸上げ」と呼ぶのですが、美味しそうな「箸上げ」の仕方や撮り方をしているとついつい注目してしまいます。
カメラワーク
野外でのロケ番組だと、出演者を撮っている画だけを使っているわけではなく、バックショットで俯瞰からの画だったり、ドローンの映像を差し込んだり、色々なカメラワークを差し込んで視聴者を飽きさせない工夫をしています。旅番組での「ドローン映像」はその土地の自然や景色を美しくみせて、視聴者に興味を持たせるポイントになりますし、食べ歩きなど街歩きの際の「俯瞰からのバックショット」は視聴者が実際に歩いている感じを体感できたりします。だからこそ、見たことのないカメラワークだったり、変わった撮り方をしているとつい注目してしまいます。
企業の広報担当
テレビ番組では、有名な企業や飲食店を取り上げることがよくあります。その企業を取材させて頂くにあたり、先方の広報さんとやり取りさせて頂くことになるのですが、広報さん自身が取材されたり、コメントしていたりする場合もよくあります。なので、他の番組で、知っている広報さんを見かけると、「あ、@@さんだ!」とついつい見入ってしまったり、過去に取材したことのある企業で広報さんが知らない人だったりすると、「あ、ここの広報担当変わったのかな?」とチェックしたりしています。
まとめ
今回は、実際にテレビの制作現場を経験した筆者の「作り手側の目線」でのテレビの観方のポイントを紹介しましたがいかがでしたでしょうか?メディア業界を目指す皆さんは、作り手側の目線も意識してテレビを観てもらうと、働いてから役立つことが色々あると思いますので、是非、試してみて下さい。