何がNG!?【番組制作におけるコンプラチェックとは?】

テレビ番組制作におけるコンプライアンスチェック テレビ番組制作において、制作側は、ただただ面白いものを作っているわけではなく、常に「これを放送して本当に大丈夫か?」ということを真摯に考え、何度も危機管理チェックを行ってい...


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テレビ番組制作におけるコンプライアンスチェック

テレビ番組制作において、制作側は、ただただ面白いものを作っているわけではなく、常に「これを放送して本当に大丈夫か?」ということを真摯に考え、何度も危機管理チェックを行っています。
特にコンプライアンスチェックを担当する、プロデューサーやAPは、ロケや収録の際、放送までの映像チェックの際には、何か法律に触れるようなことはしていないか放送禁止用語等の発言・使用はないかなど、常にアンテナを張ってチェックしています。
今回は、テレビ番組制作におけるコンプライアンスチェックとは、どのようなことをしているのか、放送する上でどんなことに気を付けなければならないのかをいくつか紹介していきたいと思います。

ロケをする際の危機管理チェックポイント

屋外でのロケの場合には、周囲への配慮や安全確認はもちろんのこと、道路交通法などの法律に触れていないかなどもチェックしながらロケを行っています。
例えば、以下は要チェックポイントです。

車での撮影の場合

道路交通法に触れる、以下の行為には注意が必要です!

【シートベルト】
後部座席であってもシートベルト着用は義務化されています。撮影の場合でも、例外はなく、出演者はもちろん、撮影するディレクターやカメラマンもしっかりつけなければなりません。

【ヘッドレスト】
撮影の際、邪魔だからと外すのはNGです。こちらは、法律的に義務化されてはいませんが、事故の場合保険適用外になったり、危険を伴うのでやめましょう。

【ペットを抱きかかえながらの運転】
日常生活でもたまに見かけますが、運転の邪魔になり危険な行為です。状況にもよりますが、膝に乗せて運転したり、窓から顔を出させた場合など、道路交通違反になります。

【運転中の電話】
運転中の携帯電話使用は、「手に持ち通話のために使用する」「画面を注視する」と違反になります。また、ハンズフリー装置(イヤホンマイク)で話す場合は違反にならないというのが浸透していますが、道交法の罰則の対象外になるだけで、都道府県の道路交通規則でイヤホンマイクによる通話が禁止されている地域もあるので注意が必要です。

【チャイルドシート】
幼児用補助装置を使用せず6歳未満の幼児を乗車させて自動車を運転してはNGです。ただ、授乳中や病気で世話をしなければならない時、肥満児で装着が無理な時、座席の構造上、チャイルドシートを固定することができない時など、免除される場合もあります。6歳以上は基本的にはシートベルトですが、身長が140cmに満たない場合は、チャイルシートを必ず着用させなければならない為、注意が必要です。

【トラックの荷台に人が乗る】
公道では違反になります。私有地の場合でも、車メーカーからクレームが入る可能性もあるため基本はNGです。

その他

【マッサージ】
基本的には「あん摩マッサージ指圧師」の国家資格を持っている人の施術の場合のみ「マッサージ」という言葉がつかえます。
整体、カイロプラクティック、リフレクソロジー、赤ちゃんマッサージなどはいずれも国家資格ではないので、その紹介の際に「マッサージ」という言葉を使用すると誤解をうむ可能性があり、注意が必要です。

【刀・剣・ライフル】
本来、武器として製作され、殺傷能力も高い刀剣類については、教育委員会の登録を受けたもの等を除き、所持することが禁止されています。
所持の許可を受けている者から刀剣を持たされたのだとしても、所持違反、それを振り回したら銃刀法違反に問われる可能性があり注意が必要です。また、猟友会などに密着してライフルを触らせてもらうのも同様なので注意が必要です。

【梅酒、自家製ビール】
日本では酒税法により、一般人がアルコール分を含む酒を製造販売することは禁止されています。
家庭で作る梅酒は既に課税されている焼酎に漬ける行為なので問題ないのですが、これを旅館などで提供したり、店で出す、となると届け出が必要です。旅番組などで紹介しがちですが、注意が必要です。

放送までの危機管理チェックポイント

ディレクターが編集を進める中で、プロデューサーやAPは、そのデータをチェックし、ナレーションやテロップの文言に、放送禁止用語や避けた方がいい表現の仕方をしていないか情報の裏はきちんと取れているのか使用している素材の許諾はクリアになっているのか等を細かくチェックしています。
以下は危機管理チェックの際の要チェックポイントです。

放送禁止用語

テレビ業界には、視聴者である全ての人の人権を侵害しないためにいわゆる「放送禁止用語」というものがあります。差別的(人種・民族差別や職業差別、性的身体的差別など)であったり、侮蔑的な言葉や卑猥である言葉・表現などを放送しないように、各局でこの言葉・表現は使用禁止などルールが決まっています。また、商品などで「商標登録」されている名称は言い換える、メーカーやスポンサーに配慮した表現をするなど、色々な決まりのもと放送しています。
例えば、以下のような言葉・表現には注意が必要です。

【魚屋】
魚貝類を取り扱う店。職業差別であるため。その他、「八百屋」、「床屋」なども含め、「〇〇屋」という表現は職業差別にあたるので、よく「〇〇屋さん」「〇〇店」と表現されています。

【看護婦】
看護をする女性。性差別にあたるとされる。

【外人】
自国以外の国の人。国に関わる差別であるため。

【OL】
OfficeLadyの略語。性差別にあたるとされる。

【化学調味料】
昔は「化学調味料」という表現は、肯定的なイメージがあり、味の素などの家庭用調味料の総称としてメディアでも使われていました。しかし、近年では、マイナスなイメージで使われることも多いため、各メーカー、スポンサー配慮などの点も含め、現在は「うま味調味料」という名称を使うようになっています。

情報の裏どり

テレビで発信される情報は、「どこかの誰かが言っていること、思っていること」を取り上げるのはNGです。
データを取り上げる場合は、公の機関が公表しているものでないと取り上げられません。例えば、データのグラフやランキングを出すときには、画面の隅に小さく「出典:〇〇」などと記載されていると思います。そういった資料を集めたり、確認したりするのはADさんのお仕事で、その資料を元にAPやプロデューサーがきちんと裏どりや許可取りができているかチェックしています。
例えば、以下のような情報を取り扱う場合には注意が必要です。

【最上級表現】
「日本一」「NO.1」などの最上級の表現は、客観的・明確な裏付けができなければ使用できません。例えば、飲食チェーン店であれば、「店舗数」なのか「売上」なのか等、何が日本一かを明確にし、きちんと企業の公式HP等から情報を確認して裏どりが必要になります。

素材の許諾

放送にあたって、何か素材を使用する際には、その素材の所有者、撮影者、出版社など各所に使用許諾を貰う必要があります。写真や書籍、新聞や雑誌の記事、映像関連など全てにおいて「著作権」が発生します。その著作権元に使用許諾の確認をするのもADさんのお仕事です。APやプロデューサーは、許諾申請書や許諾を貰ったメール等をもとに、使用許諾が取れているかチェックしています。
例えば、以下のような場合には注意が必要です。

【Instagramに投稿された写真画像】
投稿者に使用の許諾を取る必要があります。
また、写り込んでいる対象物にも確認が必要なのもあります。
例えば、商品や神社仏閣、キャラクターなどの場合には、所有者(店、寺社、作者)にも使用許可の確認が必要です。
確認の際には、使用料の有無「クレジット表記」の有無の確認も必ずしましょう。

※「クレジット表記」…「写真撮影:●●」や「Ⓒ●●」など、作者や撮影者、著作権元を素材と一緒に表記すること。

【撮影した部屋に並べられていた漫画】
部屋を紹介する際に、本棚などに漫画が並べられていた場合。
部屋全体を紹介するという目的で少しだけ写り込んでいるくらいであれば許容範囲とされますが、トークなどで触れて手に持って紹介する場合などは、出版社等にも使用許可の確認が必要になります。

その他

【紙幣のコピー】
紙幣をコピーする行為は法律で禁止されています。
イメージで使用したい場合はイラスト等を使用するなど注意が必要です。

【赤十字マーク】
赤十字や、それに類似するマークの無断使用は法律違反にあたります。
救急車や看護師などのイラストを描く際に、分かりやすくするために「赤十字マーク」を入れるのはNGです。

【無農薬】
野菜などを紹介する時に使いたくなる言葉ですが、農地の土壌に残留農薬がすでにあることを考えると「無農薬」という言葉はテレビでは使えないとされています。有機農法や低農薬であれば許容範囲といえますが、表現には注意が必要です。

【効果・効能をうたう表現】
食品を紹介する場合、「効果・効能をうたう表現」には注意が必要です。体に良い影響を与えるかのような表現をして、医薬品と誤認させるようなことは「薬機法」で禁止されています。
例えば…生姜に関して「のどにいい」は許容範囲といえますが、「のどに効く」はNGです。同じように、ブルーベリーに関して「目がよくなる」はNGなので注意が必要です。

まとめ

今回は、テレビ番組制作における危機管理チェックについて紹介しましたがいかがでしたでしょうか?これからテレビ業界を目指す、もしくは今制作の現場で働き始めたところだ、という皆さんは是非参考にしてみて下さい。