やばい仕事ばっかり⁉テレビ業界事典~バラエティ番組の珍しい業務~

見ていて面白いバラエティ番組、それをつくるスタッフは珍業務を数多くこなしている! テレビやサブスクリプション系映像配信サービス、YouTubeなどでよく見かける『バラエティ番組』。 番組演出の責任者である『総合演出』や『...


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見ていて面白いバラエティ番組、それをつくるスタッフは珍業務を数多くこなしている!

テレビやサブスクリプション系映像配信サービス、YouTubeなどでよく見かける『バラエティ番組』。

番組演出の責任者である『総合演出』や『ディレクター』が面白い企画・テーマを考えたあとは、その面白い企画をどうやって映像化するかを『ディレクター』や『アシスタントディレクター(AD)』が考えを巡らせながら、撮影の仕込み作業を行います。

今回は、テレビ業界で採用担当をしている筆者が全力取材をおこない、元&現役 アシスタントディレクター(AD)が体験した、珍業務をまとめてご紹介します!

人を楽しませる仕事の一端を垣間見てみませんか?

これって仕事と言っていいのかな…?「ミニゲームや罰ゲームを実際にシミュレーション」

番組の企画で、よく出演者がミニゲームや罰ゲームを行っていると思います。 中には「制限時間内に○○を壊す」「罰ゲームで激苦○○を飲む」「電気ショックを受ける」など、ハードそうなものもしばしば…

これらは収録の数週間前に、主にADがシミュレーションを行うことで、収録当日は安全にこれらの企画がおこなえるよう努めています。

実際のやり方は、ご想像の通り「業務時間中に、協力できるスタッフで集まってガチンコ勝負・罰ゲーム体験をする」というものになっています。

(もちろん、罰ゲーム系は志願制なので「バンジージャンプは高所恐怖症なので厳しい…」「辛いものが苦手なので…」という意見は尊重されます! ミニゲーム系は、実際の収録を意識して全力でおこないます!)

ADの基本業務の中には、メールや電話対応、WordやExcelでの資料作成などの、いわゆるオフィスワークをおこなうこともあるのですが、シミュレーション業務の時は羽を伸ばしてここぞとばかりに楽しみます!

次の項目からは、実際に番組制作スタッフから聞いた体験談をご紹介いたします!

 

罰ゲームが多い番組を担当していたら、シミュレーションのしすぎで『電気の刺激』に慣れてしまった

罰ゲームやドッキリでよくある『電流』による刺激ですが、これらもADなどのスタッフが実際にシミュレーションをおこない、安全性を確保しています。

インタビューに答えてくれたディレクターのAさんは、AD時代に『電流系の罰ゲーム』のシミュレーションを志願・体験しすぎて、整体や銭湯にある電気風呂の刺激が「もうちょっと強くならないかな…」と感じるようになってしまったんだとか…! ※個人の感想です。

刺激に慣れてしまうと、出演者との感じ方とズレが生じてしまうので、この場合は複数人のADで検証した方がよさそうですね…

もちろん、シミュレーションに関して苦手なものは強制されないですし、むしろバラエティ番組への配属を志望するような方はこういう物事に興味を持っている場合が多いので、意外とすぐにシミュレーションの定員が埋まってしまうことも多いです!

是非皆さんの中でも「ビリビリ椅子や落とし穴って、体験したらどんな感じなんだろう!?」と興味がある方は、ぜひ志願してみてくださいね!

 

体を張って証明!「特定の食材を摂取!特製の体操をおこなうダイエットを検証!」

「食後に○○を食べると代謝が良くなりダイエットになる!?」「○○を1日100g食べる人と、■■を1日100g食べる人ではどっちが痩せやすい?」「1日3回、この簡単な体操をするだけで脂肪燃焼!」といった特集企画で、実際に検証に参加している方がいるかと思います。

通販番組であれば、外部のモニターさんへ依頼することが多いですが、バラエティ番組内での検証では番組のADさんが担当するケースもあります!

もちろん参加に関しては志願制です。ですが、視聴者へおすすめできるような安全で新しいダイエット方法を専門家が監修するなかで行えるのは、とても貴重な体験かと思います。

 

また余談ですが、裏方の番組スタッフが出役として番組に出演すると人によっては

『親が「娘が地上波番組に出た!」と身近な人に宣伝しまくる』

『親戚が番組のOAデータを焼いたDVDを大量に配布した』

『まったく連絡をしていなかった知り合いから「見たよ!」と連絡が来た』なんてことがあります!

このようなほっこりエピソードは、テレビ業界あるあるです♪

 

超豪華なカラオケ体験…!?「音楽番組のカメラや音のリハーサル中、ADさんがマイクを持って熱唱!」

番組収録に際して、スタッフ陣は『音リハ』『カメリハ』と呼ばれるリハーサルをおこないます。

『音リハ』は音声が正しく出力されるかのテストをする時間を指します。

『カメリハ』はスタジオ内にある複数のカメラで、撮影の動きを実際にテストすることを指します。

 

例えば「この曲の時は、2カメが出演者Aの横顔を抜く」「この曲では、Bメロが始まるタイミングで出演者が上手から下手に5m移動するので、それを並走して追いかける」といった動きを練習します。

このリハーサルでは、演者さんの役をADがおこないます。

そのため、音楽番組のADさんには「実際に演者さんと同じ尺で熱唱する」「アイドルのダンスやフォーメーションを覚えて、カメリハの際に披露する」という業務が発生します。

筆者も実際に音楽番組のカメリハで熱唱するADさんを見たことがありますが、照明やカメラが本番さながらに動くこともあり「とても豪華なカラオケ」という印象を持ちました…!なんという贅沢!

 

1回しか行わないカメリハのために、ダンスやフォーメーションを覚えるのは非常に大変ですが、視聴者の『推し』がしっかりカメラに抜かれるためには欠かせない業務なので、ADさんは陰ながら頑張っています!

 

様々なスキルが試される!「11月に『おせち』をつくれ!」

テレビ制作は、1回放送分を制作するのに平均1.5~2か月の期間を要します。

そのため、クリスマス時期に放送する回はハロウィンの時期に制作し、お正月の時期に放送する回は11月ごろに制作しています。

 

今回のインタビューに協力してくれたADのDさんは、11月にディレクターから『3段のお重に入ったおせち』の準備を頼まれました。

11月のスーパーにおせちの食材はなかなか置いていないので、Dさんは『田作り』や『茹でた伊勢海老』などを自宅で手作りしたり、伊達巻や昆布巻きなどをネット通販で取り寄せたりしたそうです。

盛り付けもADさんがおこなうので、おせち作りに不慣れだったDさんは集めたおせちのパンフレットや画像を見ながら、必死に盛り付けをしたんだとか!

無事に撮影を終えたDさんは、同僚と仲良くおせちを分け合って、その日の夕食にしたそうです…✨

お仕事で使用した食べ物を食べることができるのも、ADさんの特権ですね!

 

季節外れのネタを準備するのは総じて大変なので、季節ものの小道具はテレビ局内の倉庫にストックしてあります。そのほかにも、コント用のコスプレや食器、ちょっとした家財道具までテレビ局の中には幅広いジャンルの備品が保管してあります!

この倉庫での取り扱いが無いような小道具ナマモノ系の備品は、ADさんが頑張って用意します! 小道具の準備には、実はン・キホーテさんやAmazonさん、メルカリさんなんかを活用している方が多いようです✨

 

学生時代でもこんなに図書館へ行かなかった…「膨大な新聞アーカイブの中から、特定の出来事の記事を探せ!」

昔の事件や出来事を振り返る番組などで、よく『過去の新聞記事』が映し出されることがあると思います。新聞が画面に映るのはほんの2秒ほどですが、この新聞記事を探し出すのは本当に大変なんです!

 

大きな事件の場合は、事件発生日の翌日などに大手新聞社の新聞記事一面をその事件が飾っている場合が多いので見つけやすいのですが

例えば「○○○○の建設に反対する、地元住民の反対運動を伝える新聞記事」が欲しい場合、『建設が発表された日』から『着工日』付近の記事を大手新聞社や地元紙を問わずしらみつぶしに探さなければなりません。

この捜索に、ADさんは日本全国の出版物や新聞が集まる『国立国会図書館』などで大手新聞社から地元密着型のローカル紙まで、細かく調べ上げています。

もちろん、デジタル化されている記事もあるので図書館備え付けのPCで検索をすれば、ある程度絞り込むことができます。 しかし、新聞社や記事によってはこのようなアーカイブ検索に引っかからないこともあるので、どうしても地道な手作業での検索が必要になることも…

 

教養番組や、過去の事件事故を振り返ったり、再現したりするような番組を担当しているADさんからは

「こんなに長く図書館にいたことは人生で初めて…」

「東京在住なのですが、東京で作れる図書カードを作れるだけつくっているので、職場から徒歩数分で行ける図書館から、電車で50分以上かかる図書館までたくさんの図書館へ仕事で通っています!」という声が。

人によっては、自身が通っていた大学の図書館にしか希望していた資料の取り扱いが無かったという理由から、平日の真っ昼間に母校へ行き、後輩や教授から不思議な顔で見られたなんて体験談も教えてくれました!

 

また、番組内で俳優やアイドルの特集VTRを作成する場合、数十年前のデビュー当時のインタビュー記事を取りあげることがあります。

その際は、街の図書館の他に日本の雑誌専門の図書館である『大宅壮一文庫』へ赴き、エンタメ雑誌やアイドル誌を読み漁ることも… もちろんインターネットによるリサーチや、有識者へのインタビューなどで情報収集をおこなうこともありますが、現在も地道なアナログ作業は行われています。

 

芸人さんの晴れ舞台を支えろ!「番組ライブにむけて、みんなで特訓!」

昨今、人気バラエティ番組はマネタイズのために『番組公式グッズ』を展開したり、大きな会場で『番組のイベント』を開催したりしています。

 

例えば、芸人さんが番組発祥のキャラクターに扮して出し物をおこなう場合、そのための練習にADさんが立ち会うことがあります。

この時のADさんの主な業務内容は、音出しキッカケ出しタイムキーパーディレクター等への事務連絡を担当します。イメージしやすいところで言うと、文化祭のように関係者が一体となって準備をおこなうんです!

もちろん、本番当日も関係者として参加し、演者さんのサポートを行います。

 

ADさんは、このイベントの中で普段は見ることができない視聴者の顔が見られた瞬間は、何とも言えない気持ちになったんだとか

このような、テレビ制作以外の業務をおこなう番組も日本には存在します。 中には、YouTube限定配信の動画作成や、円盤化の打ち合わせに参加することも。時代に合わせて、ADさんの業務は多様化しているんです。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

イメージしやすいような業務から、そんなことまでしていたの!?と思われそうな珍業務まで、テレビ業界らしい業務をADさんの視点で幅広くご紹介いたしました。

番組のコンテンツ化や、イベントの開催など視聴者との新しい接点作りによって、新たなマネタイズの機会を得ているテレビ業界。

映像演出をおこなうディレクターのアシスタントとして活躍しているADさんですが、映像制作のみならず幅広い業務にも携われるのが魅力でもあります。

こんな将来性もあって、珍しい業務もおこなえるテレビ業界に、ぜひ飛び込んでみてはいかがでしょうか?