「映像業界って本当にやばいの!?」業界の実態と今後を解説

映像業界は「キツイ」「やばい」と言う人もいるけど本当? 昨今『映像』はテレビや、TikTokなどのSNSにとどまらず、サブスク系の配信番組、街中やWebで流れる映像広告など、公開する形を変えて私たちの生活へ密接に関わるも...


この記事は約10分で読み終わります。

映像業界は「キツイ」「やばい」と言う人もいるけど本当?

昨今『映像』はテレビや、TikTokなどのSNSにとどまらず、サブスク系の配信番組、街中やWebで流れる映像広告など、公開する形を変えて私たちの生活へ密接に関わるものとなりました。

そんな『映像業界』で働くことは多くの人々に感動や興奮を届けられる一方、「過酷」「しんどそう」「やばい」という印象を持つ方がいるかもしれません。
どの業界で働いても大変な部分はありますが、なぜ映像業界はそのような印象を持たれてしまうのでしょうか?
また、映像業界の実態はその印象通りなのでしょうか? はたして、 映像業界の今後はどうなってゆくのでしょうか?
今回は、そんな映像業界の実態と今後を徹底解説します!

映像業界のなにがキツイ?実態について解説

「キツイ」と言われる理由は大きく分けて2つ存在するのですが、その前に【映像制作の現場にいる人材の働き方】について理解する必要があります。

 

まず、映像業界に関わる人材の多くは就職してすぐに「アシスタント」として現場の最前線へ飛び込み、先輩に教えられながら技術を身につける働き方をしています(OJT)。 

キャリアアップのしかたは自身の上長陣から一人前だと認められ次第、その証として『カメラマン』や『ディレクター』といった肩書を与えられるという流れになります。

そして、それ以降は肩書に大きな変化はなく、引き続き業界で技術の質を高め続けることになります。そのため、細分化された肩書で階級付けをしている会社組織とは違い、このような職種は自身のキャリアで評価されることになります。(現場の責任者として「チーフ」といった肩書は存在します。)

例えば、「カメラマン15年目で、特に海ロケの経験が豊富」「10年間続く人気番組でスタジオ収録のカメラマン(フロアチーフ)を任されている」「ディレクター5年目と、まだ若手なのに今話題の番組の立ち上げメンバー」のような部分が重要視されると言えます。

 

このような環境で働いている主な映像業界の人材は、『監督(映画、ドラマ、CM)』や『ディレクター(テレビ、CM)』、『カメラマン』、『音声』、『照明』、『美術(大道具・小道具など)』、『特殊効果』、『ヘアメイク』、『エディター(映像の編集をおこなう)』、『ミキサー(音声の編集をおこなう)』、『CGクリエイター』などが挙げられます。 

このような職種は基本的に「下積み(アシスタント)時代がキツイ」という印象を持たれがちです。

その理由は大きく分けて2つあります。

 1つ目は、OJTでおこなう下積みの時期に、ある程度人材がふるい落とされてしまうという問題があります。 

技術職は、自身の技術が成熟するまでは『通常業務』と『技術勉強の時間』が混在した時間を多く過ごすことになるので、効率よく技術を身につけることができる人はこの期間が短く終わりますが、苦手な作業があったり勉強法を開拓できないでいると他のアシスタントとの大きな差が生まれてしまいます。

そうすると、この段階で「自分には才能がないんだ」「向いていないんだ」とくじけてしまう人も中にはいるので、「映像業界は大変」「離職率が高い」という業界の印象が付いてしまったのです。

 

また、アシスタント時代は満足な技術を業界に提供することができない立場なので、基本的には昇給のスピードはゆっくりです。

もちろん、技術が伴ってくると相応の昇給が期待できます。ですが、その前に「才能もないし、今の給与はそこまで高くないし…」と感じてしまうような方は、辞めるという選択をしてしまうのです。

2つ目は、働き始めてすぐは「その業界らしい業務」を任せてもらえないという現状も関係しています。 

全く業界のことが分からない初心者でも出来る業務は、すなわち【簡単な業務→雑務】となってしまうケースが多いです。また、ある程度知識があっても現場によってやり方が決まっている場合もあり、それをまずは覚えなければいけません。

具体的な業務は、荷物運びや機材の仕込み、買い出し、リサーチ、資料作成、関係者への業務連絡などです。このような作業は映像業界以外でもおこなう事が多いので、この業務を通して「映像業界で働いている!」とは感じづらいのです。

 

もちろん、このような業務をする者がいるからこそ、現場の仕事が円滑に進むのでとても大切な存在です。 

ですが、その職種のいわば『メイン業務』を担当できるのは肩書を既にもらっている先輩です。さらに先輩の方が現場の入り時間が遅かったり、業務に裁量があったりするのにもかかわらず、まだキャリアの無い自分の方が早く現場へ行って準備をしなければならなかったり、先輩の指示待ちが多く業務に裁量がなかったりします。

そのため、どうしても先輩と自分を比較してしまい「やらせてもらえるのはこの業務なの…?」と感じてしまう可能性があります。 

 

ですが、業界でしっかりと技術を身につけていれば後に必ずメイン業務を任せてもらえますし、後輩が入ってくれば自分が行っていた業務は後輩の仕事になります。

また、下積み時代にたくさん経験をしておかないと、勉強不足のまま肩書を貰って責任者となった時に、失敗をしてしまっては多くの関係者へ迷惑をかけてしまいます。なので、アシスタント時代は焦らず着実に技術を身につけることに注力しましょう。

 

このような、下積み時代特有の問題が、映像業界が「キツイ」「やばい」と思われてしまうと考えられます。

 

ぶっちゃけ、映像業界は本当に「やばい」のか(映像業界の現状と今後) 

このような映像業界ですが、現在は人材を守るために技術職特有の傾向を変えてゆこうという動きが広がっています。 

例えば、入社したての人材に対して現場へ出る前にしっかりとした社内研修をおこなうことで、教育担当者によってムラのあった教育水準が均一化され、よりスムーズにキャリアアップができるように整備する動きがあります。 他にも、業界別の対策一例を見ていきましょう。

 

【テレビ業界】

≪業務を細分化≫

テレビ業界では、ディレクターが最終的な映像編集をおこなう『編集所』でエディター(映像の本編集をおこなう)に対して演出指示をしているそばで、特に業務が無くてもAD(アシスタントディレクター)が立ち合いをしているケースがありました。

(この業務は、ディレクターの立ち回りを見て勉強するのを目的としており、特に緊急対応が発生した場合はADの稼働が必須です。)

 ですが、現在ではその立ち合いを担当1名がおこなうのではなく交代制にしたことで、一人あたりの労働時間が短縮されただけではなく、アシスタント同士でおこなう映像チェックの体制が強固となりました。 

 

≪技術の発達による勤務時間の短縮≫

ADは、収録した映像を見ながら会話を文字に起こす『文字起こし』という業務をおこなっています。この業務は、ディレクターが実際の映像を見なくても文字を見ただけで素早く映像の編集構成を考えるのに必要な作業です。

ですが、この業務は個々の能力によって業務スピードに大きな差がうまれやすく、さらには1回あたりの収録素材が1時間以上になるものが多いので、膨大な時間が文字起こしに割かれてしまいます。

ですが、現在ではそもそも文字起こし自体を廃止する番組が出てきたり、文字起こしをするのに『文字起こしソフト』を使用したりする番組が増えています。

 

また、こんな変化もありました。

カメラ機材の軽量化に成功したことで、荷物を持つ人の負担が軽減。

会議資料をクラウド上で管理し、当日はPCやタブレットを見ながら会議をすることで、毎回会議に合わせて大量の資料を印刷していた時間を省いた。

PCのスペックが上がったことで映像の書き出し時間が大幅に短縮され、総編集時間の短縮に成功。

 

【CM業界】

≪技術の発達による勤務時間の短縮≫

CMを制作する際、まずは『Vコンテ』と呼ばれる「映像のコンテ」を作成します。

この時にアシスタントプロダクションマネージャーは、Vコンテの素材に向きそうな映像素材をリサーチする必要があります。例えば、俳優Aが出演する飲料水のCMを作成する場合は、俳優Aが飲み物を飲んでいる映像をいくつも探し出し、その中からVコンテに使用する映像を監督やディレクターに選んでもらいます。

この作業は、大量の映画やCM、テレビ番組などから探し当てる途方もない作業でした。

ですが今では検索エンジンの精度が良くなったことで必要な素材がすぐ見つかるようになったり、映像の配信サービスが一般化したことで、いちいちレンタルショップで映像テープを借りていた時間が短縮されました。

 

また、こんな変化もありました。

地図アプリの発達により、ロケーションハンティングをする前にある程度情報収集を済ませることができ、業務時間短縮につながった。

チームコミュニケーションツールの開発が進んだことで、クライアントからの修正依頼や業務の進捗状況を逐一確認出来るようになったことで迅速な対応が可能となり、確認の折り返しを待つ時間が短縮された。

 

【映画・ドラマ業界】

≪技術の発達による勤務時間の短縮≫

映画やドラマの制作は、まず監督と助監督が作品のテーマに関連するものをリサーチするところから始まります。

例えば、脚本家が医療系の脚本を書いた場合、それを映像化するにあたって「この手術ではどんな医療機器を使用するのか」と疑問に思えば、ドラマの監修についている医者から概要を聞いたのち、その医療機器を製造しているメーカーに問い合わせをして、機材の使い方を教わったり機材の提供を依頼したりしています。

また、「病院のセットに、どんな小道具を入れておかないと不自然に見えてしまうのか」、「この脚本に書いてある施術方法は5年前に主流だったものだから、この施術に変更してもらおう」といった部分にも気をまわさなければなりません。

以前は、文献や取材から時間をかけて情報を収集していましたが、現在ではインターネットである程度情報を調べてから取材や提供交渉をすることができます。

 

——————————————————–

 

このように、以前はどうしようもなかった業務に対する解決策が、現代では大幅に増えたことでアシスタントの労働時間に余裕が生まれ、より技術の勉強に尽力できるようになりました。

さらに離職率を低くするため、「人材の入社前に、しっかりと働き方について説明をする」時間をより積極的に設ける企業も出てきました。 

例えば、テレビ・CM業界へ人材を派遣する『フォーミュレーションI.T.S.』では、現場と人材のマッチング前に「元テレビマン現キャリアマネージャー」によるヒアリングをおこなっています。さらに、配属候補先の現場のリアルな状況を配属前に伝えています。 

 

このように、以前の映像業界は「やばい」と言われてしまうようなことがありましたが、現在は改善の傾向がみられるので、安心して映像業界へ飛び込んでみてもいいのではないかと思います。

もちろん、過去の体制を変えていない企業もあるかもしれませんので、事前のネットでのリサーチや、採用選考中に採用担当へ積極的に質問をするのが大切です!

まとめ

いかがでしたでしょうか? 

映像業界の抱える問題や、改善されている点をご紹介しました。業界的にも整備が進んでいて安心できる企業はありますし、その中でも自身に合う社風の企業はきっとあると思います!

ただし、まだ整備が進んでいない企業で苦労をしてしまったり、企業方針と自身の方針の不一致による働きにくさはどうしても起きてしまう可能性があるので、業界へ入る前にしっかりとリサーチをしましょう!