芸能界やスポーツ界などには、「付き人」と呼ばれる役割の人がいます。
「憧れの人の下で働きたい」「付き人からデビューしたい」など、そういった方が付き人を志望するケースが多いです。 しかし、付き人が具体的にどのような業務をするのか、知らない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、付き人とは何か、仕事内容やマネージャーとの違いを紹介します。
付き人とは
付き人とは、主に有名人、スポーツ選手などのサポートや世話をする人のことです。
武道や芸能界の一部の分野では、弟子が師匠のもとで修行する際に、付き人として師匠の生活や稽古の手伝いをすることがあります。
これは徒弟制度における一般的な習わしであり、付き人は師匠や先輩から指示を受けて雑用や世話をしながら、師匠や先輩から技術や知識を学ぶというものです。また、付き人をしていた分野でデビューしたり、独立して自分の道を歩んだりするケースもあります。
「付き人」制度がある業界として、以下が挙げられます。
・芸能界
演芸をはじめ個人マネジメントを行うマネージャーとは別に、個人的な世話やサポートをする付き人が存在します。
・スポーツ界
特に格闘技やプロレス、柔道、相撲などの武道では、弟子が師匠のもとで修行する際に、付き人として師匠の生活や稽古の手伝いをすることがあります。
・料理界
有名なシェフや料理人のもとで修行する際に、付き人としての役割を担うことがあります。
・その他の業界
政治家や実業家など、有名人や成功者の周りには、個人的な世話やサポートをする付き人が存在することもあります。そのほか伝統工芸でも付き人が存在する場合があります。
付き人とマネージャーの違い|仕事内容・待遇・キャリアを比較

仕事内容・役割の違い
付き人は、有名人の個人的な世話やサポートをすることが主な役割です。有名人とともに行動することが多く、スケジュール管理や運転など移動の手配、衣服の手入れや食事の準備、移動時の手荷物の運搬、仕事のアシスタントなどの雑務を行います。
一方、マネージャーは有名人のビジネス面をサポートすることが主な役割です。スケジュール調整や交渉、プロモーション活動やマーケティングなど、ビジネス面での全般的なマネジメントを担当します。
つまり、付き人は個人的な世話やサポートをすること、マネージャーはビジネス面のマネジメントを担当することが役割です。また、付き人は下積みの一環で、職業のプロではありません。一方、マネージャーは職業としてマネジメントやサポートのプロといえるでしょう。
待遇・給料の違い
付き人は、下積みの要素が強く、給料は低く不安定な場合が多いのが実情です。芸能事務所に所属するのではなく、タレント本人に直接雇用されているケースもあり、地位が高いとは言えず、日々の仕事は体力的にも精神的にも厳しいことが少なくありません。
その一方で、マネージャーは事務所に会社員として所属することが多いため、収入や待遇の安定性という点では付き人よりも恵まれています。経験を積み、信頼を得て敏腕マネージャーとして活躍できれば、チームをまとめる管理職へと昇進する道も開かれます。
そうなれば高収入を得るチャンスも広がり、芸能界で長く安定して働ける可能性が高まるでしょう。
| 付き人 | マネージャー | |
| 給与水準 | 低め・変動しやすい | 昇給の可能性あり |
| 雇用形態 | タレント本人に直接雇用 | 会社員(芸能事務所に所属) |
| 安定性 | 不安定な場合が多い | 比較的安定している |
キャリアの違い
付き人は、芸能界の現場を間近で学べる貴重な下積み期間といえます。
日々のサポート業務を通じて、タレントとの信頼関係を築き、業界特有の流れや人脈を得ることができ、一人前となってデビューすることを目指します。
マネージャーは、事務所の社員として入社。先輩や上司とチームでタレントのスケジュール管理や交渉といったマネジメント業務をこなし、さらに管理職として昇進していくことを目指します。
また、付き人だった人が経験を生かして、マネージャーとしてキャリアアップして業界を歩んでいく場合もあります。
付き人の仕事内容とは?日常業務から現場での対応まで

付き人が担当する具体的な仕事内容をいくつか紹介します。
日常業務
・生活面のサポート
有名人やスポーツ選手の衣服の手入れや食事の準備、移動時の手荷物の運搬、アシスタントなどの雑務を行います。有名人とともに行動することが多く、仕事場だけでなく、プライベートな買い物や外食先への送迎など、その人の生活面全般にわたってサポートすることもあります。身の回りのお世話といってもよいでしょう。
・スケジュール管理と調整
有名人のスケジュール調整を行います。そのためには、有名人の仕事からプライベートまで、予定を細かく把握し、移動やイベントで効率的に動くことが必要です。
付き人は、自分がついている師匠が仕事に専念し、最高のパフォーマンスを発揮できるよう公私にわたりサポートし続ける必要があります。
現場での対応
・コミュニケーションの仲介
他の有名人やスタッフなどの間でのコミュニケーションの仲介を行うこともあります。
付き人が師匠のサポートをすることで、師匠の成功に貢献できるケースもあります。
・体調管理
スケジュールが詰まっている場合は、食事や休憩時間が限られてしまうこともあるなどハードな面もあります。合間で食べられるような軽食を用意しておくなどの気配りも必要です。
また、師匠との信頼関係を築き、お互いの抱える悩みや問題を共有し解決することも重要です。状況に応じた柔軟な対応も求められるため、付き人自身もストレスやプレッシャーに対応する能力が必要とされます。
芸能界に関連する仕事に興味がある方は、ADの仕事についても学んでみてはいかがでしょうか。以下の記事も是非参考にしてみてください!
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1日のスケジュール
付き人は、運転手なども兼ねており、一日中仕事を行う芸能人の側でサポートを行うため、
朝早くから夜遅くまで師匠に従事することが多いでしょう。
例えば、早朝に師匠が仕事場に向かうため、師匠の自宅へ運転してお迎えに行くとします。日中は仕事中の師匠の周りをお世話したり、業界の慣習を勉強して過ごします。
夜になると、仕事終わりの師匠を自宅まで届けます。ですが、師匠がお酒が好きな場合は飲みの席まで付いて行ったり、師匠の仕事や用事によっては、送迎のために日をまたいで働くこともあるでしょう。
師匠をサポートをする仕事なので、師匠が休みの日であっても、買い物に行くと言われれば駆けつけて運転をすることもあります。そのため、付き人には基本的に休日というものはなく、常に師匠のために待機している状態が続きます。
付き人のキャリアパス

付き人を目指すうえで、どのようなキャリアパスがあるのか知っておくことも大事です。ここでは、付き人のキャリアパスについて解説します。
付き人をしている分野でデビューする
分野によっては、付き人からデビューできるケースがあります。たとえば、以下のようなものが挙げられます。
・アイドルグループのメンバーの付き人として活動しており、そのグループと同じ事務所からデビューした
・著名な俳優のアシスタントとして活動していた際に、その俳優の紹介で芸能事務所に所属し、俳優としてデビューした
芸能界では上記のような例があります。ほかにも、伝統芸能であれば付き人として仕事をしつつ、芸事を身に付けていくことが多い傾向です。またプロレス団体であれば、トップレスラーを目指すために付き人から始めることもあるでしょう。
このように付き人として経験を積み、自分自身がその分野のプロとしてデビューすることを目指すなら、必要なスキルやノウハウを師匠から見て学ぶことが重要です。
また付き人として働きながら、業界内で人脈を広げることも大事です。周囲の人たちと積極的にコミュニケーションを取り、自分の存在や能力をアピールすることで、デビューのチャンスを掴めるでしょう。
マネージャーに昇格する
付き人としての経験を活かせるポジションとして、マネージャーやプロデューサー、タレントマネジメント会社のスタッフなどが挙げられます。芸能事務所に雇用されている付き人であれば、頑張り次第で芸能マネージャーへ昇格できる可能性もあるでしょう。
付き人からマネージャーに昇格するためには、以下のようなステップを踏むことが重要です。
・経験を積む
付き人としての経験を積み、師匠や上司から指導やアドバイスを受け、その業界や組織における知識やノウハウを身に付けます。
・自己研鑽
自分自身で情報を収集し、業界の動向やトレンドを把握しましょう。また、コミュニケーション能力やビジネススキルなども磨くことも重要です。
・マネージャーにアピールする
付き人としての業務をこなすだけでなく、マネージャーとして必要とされる能力や意欲をアピールしましょう。自分が担当したアーティストやプロジェクトの成果を示すことで、自己アピールを行えます。
・機会をつかむ
マネージャーに昇格するチャンスがあれば、積極的にチャレンジしましょう。また、ほかの企業や業界でマネージャーとしての経験を積むこともおすすめです。
・マネージャーとしての成果を上げる
マネージャーに昇格した後は、担当芸能人の成功に貢献することが求められます。成果を上げることで、自身の評価やキャリアアップのチャンスを得られるでしょう。
マネージャーから芸能事務所の役員や社長になれるケースもあるため、コツコツと努力することが大切です。
付き人の待遇・給料
平均的な給料相場
自分がつく師匠や所属する会社によって、もらえる給料の額は差がありそうです。
師匠個人に雇用される場合は、師匠の職業や関係性によって変動します。
一方、個人ではなく会社に付き人として雇われる場合は、月20万円台前後など比較的固定された額をもらえる場合もあります。
ちなみに、芸能マネージャーの平均年収は320万円程度だとされています。
待遇や環境の実態
先ほども記載した通り、付き人は、師匠や先輩の生活に付いて業界の慣習や芸事を学び、一人前になってデビューすることを目指す下積みの要素が強いです。
一方で、芸能事務所に所属するのではなく、師匠となる本人に直接雇用されているケースの場合、待遇や環境は付いた人によって左右される部分が多くなるかと思います。
また近年、このような「付き人」という師弟制度は、縮小する傾向にある業界も多いため、芸能事務所に就職し、見習いとして芸能マネージャーの経験を積む人を指すこともあったり、代わりに学校を卒業することや資格を取得することで、仕事に必要な技術を身に着けるのが主流となってきている業界もあります。
付き人に求められるスキル
求められる資質・スキル
付き人には高いコミュニケーション力と気配りが求められます。
師匠が関わる多くの人々と接するため、意図を素早く理解し行動に移す力や、突発的な状況変化に対応する柔軟さが必要です。
さらに、食事や衣装、体調への気配りも、師匠との信頼を築くためには必要不可欠です。
また、送迎業務に直結する自動車運転免許も取得した方がよいでしょう。
パソコンスキルもスケジュール管理や文書作成に役立つでしょう。
これらのスキルや姿勢を身につけることで、付き人としての業務が円滑になるだけでなく、将来的なマネージャーなどへのキャリアアップにもつながります。
まとめ
付き人とは、芸能界やスポーツ界などで、芸能人や選手などのサポート役を務める人のことです。仕事内容は業界や分野によって異なりますが、主には師匠の日常的な雑用をはじめ、スケジュール管理や移動の手配、現場での準備など多岐にわたります。
華やかに見える舞台裏で、付き人は常にタレントや選手を支える重要な存在といえるでしょう。
また、付き人は師匠の下で働き、日々の業務を通じて必要なスキルと信頼を積み重ねることで、将来的にマネージャーや芸能事務所スタッフとしてキャリアを広げる道もあります。
さらに、自分自身が芸能人や選手としてデビューを目指す人にとっては、現場を体験しながら成長できる貴重な機会ともいえるでしょう。憧れる業界がある方は、付き人としてキャリアをスタートさせることも有効な選択肢です。
