芸能マネージャーは、表舞台に立つタレントや俳優、アーティストを陰で支え、活動を円滑に進めるための要となる存在です。芸能界という特殊な業界に身を置き、さまざまな人と関わりながらタレントの可能性を広げる仕事ですが、実は「未経験」から挑戦する人が多い職種でもあります。ここでは、未経験から芸能マネージャーになるための道のりを、お仕事内容などとともに詳しく解説していきます。
芸能マネージャーの仕事内容とは?

まずは、マネージャーの役割を理解することが大切です。一般的に「マネージャー」と一口に言っても、業務内容は多岐にわたります。
スケジュール管理
テレビ番組、映画、舞台、雑誌、イベントなど、タレントの出演スケジュールを整理・調整します。現場の入り時間を把握し、交通手段や移動時間も計算に入れ、遅れが出ないように管理することが求められます。
現場同行
撮影や収録、イベント会場にタレントと一緒に行き、必要に応じてサポートします。衣装や小道具の確認、台本の準備、差し入れの手配、スタッフとのコミュニケーションなど、現場での「橋渡し役」を担うことも重要です。
営業・交渉
テレビ局や出版社、広告代理店などの関係者と打ち合わせを行い、タレントの売り込みや出演交渉を行います。タレントの魅力を正しく伝えるプレゼン力が必要です。
一見するとスケジュール管理や現場でのサポートが中心の仕事に思われがちですが、実際には「営業活動」がマネージャー業務の中でも大きな柱となります。タレントの活躍の場を広げるためには、この営業・交渉力が欠かせません。
日常的なサポート
体調管理の声かけ、メンタルケア、日常生活の相談相手になることもあります。芸能活動は不規則でストレスも多いため、マネージャーが安心感を与えられる存在であることが大切です。
将来のキャリア設計
タレントの方向性を見据え、どのような活動をすべきか一緒に考え、戦略を立てます。単なる「雑務係」ではなく、プロデュース的な役割も担うことがあります。
芸能マネージャーに求められるスキルと向いている人
コミュニケーション力と調整力
マネージャーは、担当しているタレント本人だけでなく、テレビ局スタッフ、広告代理店、マスコミなど幅広い関係者とのやり取りが必ず発生します。相手の意図を汲み取る能力、誤解のないよう伝える能力など、いかに限られた時間で円滑にやり取りできるかが問われます。
また、タレントの仕事場となる現場には多くの芸能人やスタッフがいるため、自分の担当芸能人が周りと円滑なコミュニケーションが取れるような配慮と立ち回りが必要です。
臨機応変さ・マルチタスク対応
担当の芸能人が現場で落ち着けるように、愛用品や食べ物を準備・把握しておくことや、タレントが必要な物や要望した物など急な買い出しに対応することも芸能マネージャーの仕事です。
また、タレントが仕事中の現場ではハプニングがつきものです。そのため、現場でタレントのサポートをしながら、ハプニングによって生じたスケジュールの変更や起こったトラブルに冷静に対応できる力が必要です。電話対応をしながらスケジュールを修正し、同時にタレントの体調を気にかける…といった複数業務を同時にこなすマルチタスクへの対応力が求められます。
体力・メンタルのタフさと共感力
売れっ子芸能人を担当する場合は、追っかけなどに注意しながら送迎したり、現場のスタッフと打ち合わせしたりなど、サポート業務は多岐にわたります。タレントの稼働時間に伴い、自分の労働時間も長時間になり、早朝から深夜まで動くこともあります。また移動が多いので疲労がたまりやすい仕事です。
そして、タレントの気持ちを理解し、寄り添いながらも冷静に判断することもマネージャーとして必要なことです。甘やかすのではなくより活躍できるように支えられる姿勢が重要です。よって、精神的にも体力的にもタフさが求められます。
芸能マネージャーになるには?就職・転職ルートを解説

芸能事務所の求人に応募
もっとも一般的なのが、芸能事務所の求人に応募する方法です。求人サイトや事務所の公式サイトに「マネージャー募集」として掲載されていることがあります。
所属タレントが数千人を超える大手から、所属タレントが数人という小規模なプロダクション、タレントひとりの個人事務所までさまざまです。どの分野で活躍するタレントをサポートしたいか、どの分野で自身のスキルを伸ばしていきたいかを考えながら決めましょう。
制作会社やイベント会社からの転職
直接タレントを抱えていない制作会社やイベント会社から入り、実績を積んだのち芸能事務所へ転職するケースもあります。
タレントが活躍している業界への入口として、制作側のスタッフから始める方もいます。業界内の仕組みや特有のルールなどを学ぶことで、マネージャーとして転職する際に学んだ知識が役にたつ場合もあるでしょう。
インターン・契約社員からキャリアを積む
最初は契約社員やアルバイト採用として入り、実績を積んで正社員登用されるケースも多いです。また、中小規模の芸能プロダクションでは正社員に限らず、アルバイトや契約社員などの非正規雇用も多くみられます。
正社員に比べて福利厚生が十分に整っていないところもあるので、待遇面は不安定な部分もあります。しかし事務所の正社員として働く前段階としては実務経験を積むことができるので、キャリアのスタートの1つにはなります。
紹介・コネクションを活かす方法
芸能界は紹介文化が根強く、知人の紹介で採用される例もあります。必ずしも公募だけが入口ではありません。
既に自分が業界内で働いていてコネクションがある場合や、全く違う職種から紹介されて挑戦する場合など公募以外にも業界内からマネージャーのキャリアを始められる可能性もあります。
また、自身がタレントとして活動していた経験を生かしてマネージャーに転身する方もいるようです。
芸能マネージャーの年収・待遇のリアル
平均的な年収・月収相場と幅
大手求人サイトのデータを見てみたところ芸能マネージャーの平均年収は390万円でした。テレビ局や収録スタジオが多い東京と大阪では、東京が380万円、大阪が350万円でした。幅としては200〜500万円台というところで、会社や地域によって異なります。
また、大手芸能事務所であるホリプロの新卒の参考初任給は、大卒で30万円でした。月給とは別に住宅手当や年2回のボーナスが支給されます。
会社によって手当の有無や月給額にも差があるので、同じマネージャーでも収入が異なることが多いでしょう。
待遇や福利厚生、勤務環境の実態
所属している会社の規模や雇用形態によって大きく差が出る部分です。
先程も例として挙げたホリプロの場合は、正社員の総合職として入社後マネージャー事業以外の部署へ配属されることもあるようです。社内で様々な部署を経験することで幅広いエンターテイメントへの理解を深めることができます。
福利厚生としては、会社周辺のマッサージの割引であったり、出産育児休暇はもちろん個人が自由に記念日を設定し年間5日間取得できるアニバーサリー休暇などがあるようです。
芸能マネージャーのキャリアパスと将来性

新人からチーフへ
まずは所属する事務所内での昇進を目指す方法が挙げられます。
担当するタレントのジャンル(俳優・芸人など)によって働き方が大きく異なりますが、勤続することでマネジメントスキルの向上や、担当芸能人を積極的に売り込むことで昇進を目指せるでしょう。
昇進すると、担当外の芸能人も含めた営業活動や、他のマネージャーのサポートなども業務として加わってきます。管理職になると、現場より後方の管理業務が中心になります。
独立やフリー転向、大手事務所への転職も
それまでの仕事で培ってきた技術や人間関係などを生かして独立して新しい事務所を立ち上げる方法もあります。
マネージャーをする中で事務所に所属してくれるタレントを自分でみつけ、芸能事務所の社長として起業するということです。
加えて、経営も自分たちで行うことになるので、経営スキルなどの資質も備わっていると良いでしょう。
芸能マネージャーとして働く上での注意点
労働時間が不規則
自分が担当しているタレントの活躍に準じて変動することが多いため、不規則になりがちです。一般的な会社員とは異なり、深夜や早朝の現場や休日のイベントも多く、生活リズムが崩れやすいです。
給与水準が高いとは限らない
小規模事務所であったり非正規雇用などでは手取りが少ない場合もあります。労働時間によっては給与が少ないと感じたり、所属タレントの活躍によって異なることもあるでしょう。ただし経験を積むと大手へ転職でき、待遇改善の道もあります。
タレントと距離感を保つ難しさ
タレントは世の中のイメージどおりのキャラクターを演じたり、ストレスがかかることがあるので、公私にわたって相談に乗ることもマネージャーの重要な役割です。
親密になりすぎたり疎遠になりすぎるなどマネジメント業務が疎かにならないようにしましょう。信頼関係を築くことと、プロとして線を引くことの両立が求められます。
プロ意識の重要性
担当タレントと親密になっていたとしても、タレントのイメージを崩さないようにコントロールしていくことも重要な仕事です。タレントが発信するSNSなどもチェックし、イメージが崩れて仕事が減少しないようにプロとして支えていくことが重要です。
まとめ:芸能マネージャーになるには情熱と覚悟が必要
華やかな芸能界の中で、担当タレントが大きく活躍するのを目にしたとき、何物にも代えがたい喜びとやりがいを得られるはずです。また、タレントから「今日どうだったかな?」などと感想を聞かれたり、公私にわたって相談された時に、頼られる存在であることを実感することができるはずです。
大手芸能プロダクションや芸能事務所では正社員採用が中心ですが、小規模な事務所ではアルバイトや契約社員から正社員を目指せるケースもあります。
芸能界という華やかな世界でマネージャーとして活躍していくには、自分が担当しているタレントをブレイクさせたい・さらに活躍させたいという熱い思いと、激務の中で耐えられる体力とメンタルが必要という覚悟がとても重要です。
