今年の夏の甲子園は、左右の2年生投手の好投で勝ち上がってきた沖縄尚学が、決勝でも持ち味の「守り勝つ野球」を貫いて日大三高に勝ち、初優勝を果たして幕を閉じました。日本一に輝いた沖縄尚学の末吉良丞投手や新垣有絃投手、準優勝だった日大三高の田中諒選手など、数々の選手が活躍して熱戦を繰り広げ、甲子園球場には、あわせて72万人を超える観客が詰めかけて、大きな盛り上がりを見せました。
甲子園は単なる高校野球の大会ではなく、全国の注目を集める「舞台」として、選手やチームをドラマチックに描き出します。熱戦の裏には、放送・報道・広告・イベント運営など、エンタメ業界に直結する多くの仕事が関わっており、その仕組みを知ることは業界研究にも役立ちます。そこで今回は、今年の甲子園の名試合を振り返り、観戦方法など甲子園の基本を紹介していきたいと思います。
甲子園の観戦方法
現地でも当日券の販売が行われますが、甲子園の近所に住んでいてふらっと行けるという方以外は事前の購入がおすすめです。入場券は前売りの指定席で、チケットぴあ・ローソンチケット・あさチケ・甲チケの販売サイトまたはコンビニ店頭(準々決勝以降は除く)で販売されています。
2025年の甲子園
2部制の導入
今年の大会では、日中の暑さを避けるため、午前と夕方に分けて試合を行う「2部制」をさらに拡大し、1日4試合の日にも適用しました。こうした中で「時間との戦い」も生まれてきました。
【大会本部が決めていた時間】
▽午前に行う2試合の時間帯を、午前8時から最大午後1時45分まで。
▽夕方の時間帯を、午後4時15分から原則として午後10時すぎまで。
この時間をすぎた場合は「継続試合」として、翌日以降に再開することにしていました。
広島・広陵高校の出場辞退
広島の広陵高校は野球部員による暴力問題を受け、2回戦を前に出場を辞退しました。SNSでの告発や過去のトラブルの拡散が相次ぎ、注目を集めました。
準決勝・決勝の試合ハイライト
準決勝第1試合:日大三vs県岐阜商
準決勝の第1試合は西東京の日大三高が県立岐阜商業に延長10回タイブレークの末、4対2で勝って14年ぶりに決勝進出を果たしました。日大三高は1回、1アウト二塁三塁のチャンスを作って、2年生で4番の田中諒選手のタイムリー内野安打で1点を先制しました。2回に同点とされた日大三高は4回に1アウト二塁三塁のピンチを招くと2人目でエースの近藤優樹投手がマウンドに上がり、後続を打ち取って切り抜けました。しかし、5回に勝ち越しを許し、1対2と終盤まで追う展開となりましたが、8回のチャンスに近藤投手がみずからタイムリーヒットを打って同点としました。日大三高は10回、1アウト二塁三塁として近藤投手が再びタイムリーヒットを打って、勝ち越すなど、この回2点をあげました。
準決勝第2試合:沖縄尚学vs山梨学院
沖縄尚学高校が山梨学院に5対4で勝って、夏の甲子園では初めてとなる決勝進出を果たしました。沖縄尚学は1点を追う1回、今大会初めて4番バッターとして起用された宜野座恵夢選手が、2アウト三塁のチャンスでタイムリーヒットを打って、同点に追いつきました。このあとは3点をリードされますが、6回には、先頭バッターの宜野座選手がツーベースヒットで出塁するなどしてチャンスを作り、前の試合まで4番で起用されていた安谷屋春空選手の2点タイムリーツーベースなどで同点に追いつきました。沖縄尚学は続く7回にも、2アウトから宜野座選手がスリーベースヒットで出たあと、5番の比嘉大登選手のタイムリーヒットで、勝ち越しました。6回途中から、2人目で登板した2年生の新垣有絃投手は、丁寧に低めをつくピッチングで山梨学院の打線を抑え、沖縄尚学が5対4で競り勝って、夏の甲子園では初めてとなる決勝進出を果たしました。
決勝:日大三vs沖縄尚学
沖縄尚学高校が西東京の日大三高に3対1で勝って、初優勝を果たしました。沖縄県勢が夏の甲子園を制したのは、2010年に春夏連覇を達成した興南高校以来、15年ぶりです。試合は日大三高が1回、1アウト二塁のチャンスで、キャプテンの本間律輝選手がタイムリーツーベースを打って、1点を先制しました。沖縄尚学は続く2回、2アウト二塁から、7番・阿波根裕選手のタイムリーツーベースで同点に追いつきました。6回には、準決勝から4番に起用された好調の宜野座恵夢選手のタイムリーヒットで勝ち越したあと、8回にも宜野座選手がタイムリーツーベースを打って、3対1とリードを広げました。沖縄尚学の先発の2年生、新垣有絃投手は、140キロ台のストレートと鋭く曲がるスライダーを低めに集めて、強打が持ち味の日大三高の打線を8回途中まで1点に抑えました。このあとは、同じ2年生のエースの末吉良丞投手がマウンドに上がり、9回に1アウト一塁三塁のピンチを背負いましたが、最後のバッターをダブルプレーに打ち取って、沖縄尚学が3対1で勝ち、夏の甲子園では初めての優勝を果たしました。
話題となった試合
準々決勝:横浜vs県岐阜商
準々決勝第3試合では春夏の連覇を期待されている神奈川の横浜高校を県立岐阜商業が延長11回のタイブレークの激戦の末、8対7でサヨナラ勝ちしました。
3回戦:沖縄尚学vs仙台育英
3回戦屈指の好カードとなったこの試合は、序盤から点の取り合いとなりました。沖縄尚学がリードすれば仙台育英がリードし、さらに沖縄尚学が追いつくという展開で試合は延長戦へ。迎えた11回、沖縄尚学が2点を奪い、沖縄尚学が激闘の末勝利。
視聴方法
テレビ:NHK総合、Eテレ(教育テレビ)、ABCテレビ、BS朝日4K
ラジオ放送:NHKラジオ第1、ABCラジオ
インターネット配信:スポーツナビ内[バーチャル高校野球](無料)
チケット概要と席の仕組み
座席の種類
座席は大きく分けて4つあります。中央指定席、1・3塁指定席、アルプス席、外野席です。
中央指定席:バックネット裏に該当する座席で、座席には折り畳み式のテーブルがあり、座席間もゆったりしているので快適に観戦できるエリアです。また、座面は固いプラスティックではなくクッション性のある柔らかい素材なので、長い時間座っていてもお尻が痛くなりにくいのもポイント。
1・3塁指定席:座面は固いプラスティックなので長時間座る場合は座布団が欲しくなりますが、折り畳み式のテーブルがついているのは便利です。甲子園では、午前中は1塁側が日向、午後は3塁側が日向になります。
アルプス席:出場校の応援団やブラスバンドが利用する席ですが、一般の人も入場できます。応援が非常に盛り上がるエリアですが、屋根がないので雨が降るとずぶぬれになります。
外野席:外野席は座席数も多く、比較的チケットが買いやすいのがメリットです。ですが、屋根や背もたれはなく、夏の大会は1試合観戦でもかなり日焼けします。
料金
今年の大会は「2部制」が導入されたことから、日程によって入場券の料金が異なり、
「2部制」が行われる8月5日の大会1日目から10日の6日目までは入場券を午前と夕方で同じ料金で別々に販売しました。
8月5日の大会1日目から10日の6日目まで
▽中央指定席は2500円
▽一塁・三塁の内野席は大人が2000円、子どもが500円
▽アルプス席は1000円
▽外野指定席は大人が500円、子どもが100円
「2部制」が行われない8月11日の大会7日目以降
▽中央指定席が4800円
▽一塁・三塁の内野席は大人が3900円、子どもが1000円
▽アルプス席は2000円
▽外野指定席は大人が1000円、子どもが200円
購入方法
当日券の販売が現地でも行われます。入場券は前売りの指定席で、チケットぴあ・ローソンチケット・あさチケ・甲チケの販売サイトまたはコンビニ店頭(準々決勝以降は除く)で販売されています。
まとめ
いかがだったでしょうか。2025年の甲子園も、選手たちの努力やチームの絆が織りなす様々なドラマで、私たちを大いにワクワクさせてくれました。現地での臨場感やライブ配信を通して楽しむのはもちろん、就活を控える皆さんやエンタメ業界を目指す方にとっては、スポーツを「観る」だけでなく「どう伝え、どう盛り上げているのか」を学べる場でもあります。甲子園は、競技そのものの魅力に加え、放送・メディア・イベント運営などエンタメの要素が凝縮されたフィールドです。ぜひ一度、自分の将来やキャリアのヒントを探す視点でも楽しんでみてください。