ChatGPTとは?
色々な場面で活躍するChatGPTとは、米OpenAI社によって開発された、人の対話のように自然な文章を生成するAIチャットサービスです。翻訳や文章の要約など、その機能は多岐に渡り、様々な業務の効率化や品質向上などを可能にしています。
番組制作においても誤情報を防いだり、文章の添削、リサーチなど活用される場面が多くあります。
今回はそんなChatGPT以外にも、番組制作で活用できそうなAIツールをご紹介していきます。
文字起こしに使えるAI

スタジオ収録やロケ、街頭インタビューなどで撮った映像は文字起こしの作業をしますが、映像を再生して声を聞き取りながら1から書き起こすのでとても時間がかかる作業です。
そこで文字起こしをやってくれるAIアプリを3つ紹介します。
Premiere Pro
番組制作の中で編集時に使っているソフトがPremiere Proなのですが、文字起こしにも大活躍しています。Premiere Proの文字起こしの機能を使うと音声のテキスト化をAIが瞬時に行ってくれます。
また、外国人にインタビューをした映像などでも、27言語に対応した翻訳機能もあるので外国語が苦手でもスムーズに作業できます。
他にもノイズ除去の機能を使って、映像に入ってしまった雑音を消すことや、逆に足りていない環境音を延長して生成することもできます。様々な機能があるので、それぞれ使いこなせると映像編集の幅も広がるので万能です。
Notta
Nottaは、日本のNotta株式会社が運営するAI文字起こしサービスで、会議の議事録、インタビューなど、さまざまな場面で便利に使えます。
音声ファイルや動画ファイルをアップロードして文字起こしすることが可能で、wavやmp3、avi、mp4、movなどのよく使われるファイル形式にもひととおり対応しているので、会議やインタビューが終わったあと、ファイルをすぐにアップロードして文字起こしすることができます。ファイルのインポートだけでなく、マイクを使ってリアルタイムで文字起こしすることも可能です。
Nottaの対応言語数は、AI文字起こしサービスの中でもトップレベルの58言語のため、外国人にインタビューしても安心して文字起こしを行えます。
文字起こし結果の文章は、テキストファイルのほか、字幕用のSRTファイルやPDFファイルなどの形式でエクスポートすることができます。また、簡単に字幕を作ることができるので、YouTubeなど動画サイトにアップロードする動画に字幕をつける作業にも活用できます。
Texter
Texter(テキスター)は、AI 音声認識で文字起こしをしてくれる、スマホアプリです。アプリのため、iPhone / Google(Android)などからすぐに音声データをテキスト化できますし、音声だけでなく動画からの文字起こしにも対応しているため、動画のテロップ入れなど使い道は多いです。無料使用は 1 分のみとなっているため、実用的に使用するのであれば有料プランを検討する方が良いでしょう。
Excelの表まとめに使えるAI
ChatGPT for Excel
ChatGPT for Excelは、Excelでアドイン(追加)できる拡張機能の一つで、APPS DO WONDERS LLCが提供するサードパーティのアドインです。Excelにアドインを取得して追加すると、Excel上でChatGPTのAPIと連携してAI.ASL関数、AI.LIST関数、AI.TRANSLATE関数、AI.FORMAT関数、AI.EXTRACT関数、AI.FILL関数、AI.TABLE関数の7つのAI関数を利用することができます。
現在は、Windows 上の Excel (Microsoft 365)、Excel on the web、Mac 上の Excel 2019 またはそれ以降、Mac 上の Excel (Microsoft 365)のバージョンでのみ利用可能です。
プラン料金は、2025年12月現在、tarterプラン:月額7.99ドル、または、Proプラン:月額5.99ドル + OpenAI APIの2つとなります。
GPTexcel
GPTexcelは、イギリス発のAIサービスの1つで、無料で1日4回まで利用できます。
Excelで行いたい処理を入力すると、人工知能を駆使してそのまま使える関数を出力してくれる「Formula機能」と、関数を入力すると処理内容を説明してくれる「Explainer機能」の2つの機能が提供されています。
Proプラン(月額6.99ドル)に加入すると、無料機能に加えて、スクリプトとSQL生成が含まれます。また、年間サブスクリプションには25%の割引があります。1日あたり最大1,000件のリクエスト、月あたり約30,000件のリクエストが可能になります。
画像検索に使えるAI
Google Gemini
Googleが開発し、日々学習し続けているGeminiのAIはChatGPTに近い使用方法です。
チャットで質問すれば、どんな内容でも瞬時にまとめて回答を得ることができます。
メールや文章の作成、校正などをしてくれて、より良い表現の提案もしてくれるため、時間に追われる業務の中で活用すると効率の良い作業が可能になります。
また、画像検索の機能を活用すると、探している過去の動画や画像を素早く見つけることができます。過去の放送日や、調べ方が難しい一般の方が投稿した映像などを効率よく検索できるため、使いこなせば限られている時間を有効に使うことができます。
イラスト・画像生成に使えるAI
Photoshop
Photoshopでは、写真に映った不要なものを簡単に削除したり、足りていない背景を追加して自然に、かつ綺麗な写真に仕上げることができます。
また、実際には存在していない架空の写真を生成AIを使って作成することができます。
番組制作では、作家が提出する企画書に使用する画像やリサーチ資料に使用する画像などを生成AIで作成することで、実際に撮影する現場をわかりやすく説明できるように使われることがあります。文字だけで説明するよりもイメージしやすくなるため、とても効果的な機能です。
背景を取り除き、残したいところだけを綺麗に切り抜く機能は、サムネイルやアイコンに使用する演者さんの顔を切り抜く作業に適しています。
Illustrator
Illustratorに搭載された生成AIを使うとテキストを入力するだけで簡単にイラストを作成することができます。Photoshopと同様、企画書やリサーチ資料などに活用できる他、番組制作ではイラストを使用することが多くあります。
テレビを見ていると解説シーンの補足や、映像が使用できない時の代用としてイラストが使われているのを目にすることがあると思いますが、基本は1枚ずつイラストレーターの方に使用したいシーンのイメージを伝えてイラストの発注をし、作成してもらったイラストを番組内で使用しています。
イラストレーターの方に発注すると、イラスト1枚でだいたい数千円というコストがかかります。そこで、Illustratorで作成可能なイラストであれば生成AIを活用し、コスト削減に繋げることもできます。
※局によっては本放送には使用できないこともあるので、プレビュー用などで仮イラストとして使用することも多いです。
Canva
CanvaのAI画像生成機能の数々を使いこなすことができると、様々なイラストの作成が可能になります。
テキストプロンプトに作成したいイラストのイメージを入力すると、テキストからイラストへ変換することができます。頭の中にあるアイデアもイラストへビジュアル化できるため、プレゼンテーションにも活用できます。
AIを使うデメリットは?

ここまで様々なAIツールをご紹介してきましたが、便利で効率よく作業ができるというメリットがある反面、デメリットももちろんあります。
論理と信頼性
生成AIで作成した映像や画像を番組内で使用する時は、「AIで作成したもの」と明確に視聴者へ伝えることが大切です。これにより、視聴者の信頼を損なうことなく、コンテンツの公正性を保つことができます。「実際に存在しているものである」と誤解が生じるようなリアリティーのあるものは要注意です。
また、「AIから得た情報を信じたまま疑わないこと」も危険です。AIがもっともらしい文章にまとめている場合や、間違った内容の記事を参考にしている場合もあります。特にニュースやドキュメンタリーなど、事実に基づいた内容を発信する場合はAIが生成した情報の真偽を必ず人間の目で確認し、裏付けを取る必要があります。
著作権と法的リスク
AIは、インターネット上の膨大なデータを学習してコンテンツを生成します。その学習データの中に、著作権で保護されたコンテンツが含まれている可能性があります。番組制作に使用するAIツールが、どのようなデータを学習しているのか、その利用規約をしっかり確認する必要があります。
また、AIが完全に自立的に生成したコンテンツには、著作権が発生しないと解釈される場合があります。しかし、人間の意図や創作的な寄与が認められる場合は、著作権が成立する余地があります。番組制作の過程で、誰が、どのような形でAIを使い、どこまで人間の創作的関与があったかを明確にしておくことが重要です。
AIを利用して映像や音声を生成する場合は、個人の肖像権やプライバシーを侵害しないように細心の注意が必要です。特に、ディープフェイク技術などで、実在の人物を模倣する際は、法的な問題に発展するリスクがあります。
人間性のある内容か
AIは効率的なツールですが、番組のオリジナリティや深みは、人間のクリエイターとしての感性や独創性から生まれます。AIに制作のすべてを任せるのではなく、人間の創造性を最大限に引き出すための「アシスタント」として活用することが理想的です。人間の創造性とAIの両立をいかに上手くバランスをとって行えるかが大切になってきます。
セキュリティ・機密情報
AIは、与えられた情報、データ、言葉を理解し、学習を重ねることで様々な判断を行い、回答を出力しています。学習データはAIアプリ運営側に管理されているため、流出のリスクはゼロではありません。特に、クラウド型ツールでは、入力内容がモデルの改善に使われる可能性があります。
このため、未放送内容や、社内の機密情報、顧客情報などはAIに指示する際に送ってはいけません。個人で利用する際にも、住所や自宅の写真など個人情報がわかる情報は与えてはいけません。

まとめ
番組制作において労力削減、時間短縮のために「AI」は必須と言えるくらい活用が進んでいます。
また、AIも進化し続けているので、今後も制作過程の中でAIを活用する場面がどんどん増えていくかもしれません。
ですが、AIを信頼しすぎると大きな事故に繋がってしまう危険性があるため、デメリットをきちんと理解して慎重に付き合っていくことが大切です。
