「制作デスク」というポジションがどのような仕事内容なのかご存じでしょうか?
テレビを見ていて、エンドロールにデスクの名前が載っているのを見たことがあって知っているという方もいるかも知れません。実際にどんなお仕事をしているのか…。
事務的要素とAP(アシスタントプロデューサー)の要素を兼ね備えた、番組制作を円滑に行うために必要な役割を担うポジションになります。
今回は実際に制作デスクとして勤務していた筆者の体験談をもとに、具体的な仕事内容や、必要なスキルについてまとめていきます。
制作デスクの仕事内容
制作デスクは、番組制作の過程において発生する業務のサポート的存在です。
「制作デスク」と総称して言っても、テレビ局や担当のプロデューサーのやり方で振られる業務は少しずつ異なってきます。
ここでは筆者自身が実際に制作デスクとして勤務していた時の内容をご紹介します。
・請求書の処理
→番組制作にかかった請求書を処理し、経理部や財務部等から承認をもらい先方へ支払い
・精算チェック
→担当番組の制作スタッフの精算に誤りがないかチェックし承認する作業
・仮払いの申請、処理
→仮払いは事後精算するには高額な制作にかかる費用の支払いの際などに、先に会社からお金を出してもらうこと。使用日の1週間ほど前までに申請が必要のためスタッフとの連携が必要になる。
・番組予算の管理
→それぞれの番組に付けられた予算を、予算表を作成し申請する。その予算内で人件費や出演料、美術代などの全ての支払いを行うため、プロデューサーのサポートを行う。
・番組放送日の管理
・契約書や発注書の作成代行
・駐車券の管理、配布
・タクシーチケットの発券、配布
→タクシーチケットの発券には使用者名や乗降車地の情報も必要なため、記載項目の情報収集も必須業務。
・電話やFAX、メール対応
・収録やロケ備品の発注
→楽屋備品や事務備品などの他にも、現場スタッフからもスケッチブックやテープ類などの注文依頼もある。
・収録やロケのお弁当やケータリング類の手配、セッティング
→ケータリング会社に来ていただく時は、スタジオ前のスペースを事前に確保しケータリングを行う申請も必須。スタジオ前にはお弁当やケータリングの他、ドリンク類やお菓子なども用意しセッティング。収録中もこまめに補充作業を行う。
・出演者楽屋のケータリングや備品のセッティング
→レギュラーの出演者の中には必須のドリンクやケータリングがある方がいるため、出演者それぞれに合わせた楽屋作りを行う。
・ライブへのスタンド花や供花などの発注
・救急箱の管理
制作デスクに求められる能力
上記の仕事内容以外にも、イレギュラーで制作スタッフなどから相談や依頼をされることがあるため、常に臨機応変に対応する柔軟性が求められます。
また、担当のレギュラー番組は基本掛け持ちで、特番も担当することがあるため、マルチタスクを計画的にこなす能力も必要です。ほとんどの番組は1番組にデスクは1人なので、制作スタッフや各部署との連携、コミュニケーションもとても大切になります。
例えば、お弁当やケータリングの発注をするにしても、当日の収録スケジュールに合わせて予約しなくてはならないため、AD(アシスタントディレクター)やAP(アシスタントプロデューサー)から情報を聞き出して相談するなど、コミュニケーションを取る機会がとても多いです。普段から積極的に制作スタッフとコミュニケーションを取ることで、多忙なスタッフとも連携が取りやすくなり、円滑な番組制作に貢献できます。
デスク業務で困ったことなどが発生した時は、他番組のデスクさんに相談することもありました。他番組のデスクさんとは業務上では基本関わりがない環境でしたが、お弁当屋さんに詳しいデスクさんや、書類作成に強いデスクさんなど様々な方がいたので、デスク同士で親しい環境を作っておくと心強くもあり、何かと助けあうことができました。担当番組で収録のお弁当が余った時は、デスク同士で配布しあう事もあり、他番組の収録日に余ったお弁当をいただけてラッキーな日も…!
デスクに限らず、経理部や財務部、編成部など他部署の方々や、外部の制作会社のスタッフ、時には出演者さんをタクシーまでお送りするなど多くの人との関わりがあるポジションなので、幅広く対応できるコミュニケーション能力がある人が向いている職業だと思います。
制作デスクに必要なスキルは?
制作デスクに必須の資格は特にありません。なので未経験でも挑戦しやすいお仕事です。
ですが、請求書処理や書類作成などパソコン作業が多いので、基本的なPCスキルは欠かせないものだと思います。また、業務内容が多岐に渡るため、マルチに動ける柔軟性や理解力、いつでも何にでも対応できるという瞬発力が試されます。
制作スタッフをはじめ、社内外の関係者など様々な人と関わるポジションなので、常に多方面に気を配り、今番組制作に必要なものを全て把握して先回りしサポートできるよう周りをよく見ながら陰で支えることが大切な役割です。
出演者もスタッフも楽しみにしているケータリング類は全て一任されていたため、誰でもテンションが上がるようなケータリングを並べることができるか、というセンスも試されます。周りを見て、人の気持ちになって物事を考えられる人にはとても向いていると思います。喜んでもらいたい!という気持ちで準備したものを出演者やスタッフから褒めてもらえた時にはやりがいを感じることができ、自分のモチベーションにも繋がります。
制作デスクの魅力
デスク業務は表に出ることは少ないものの、番組制作の根幹を支える存在です。その魅力のひとつは「制作現場全体を俯瞰できるポジション」であるという点です。ディレクターやAD、構成作家、タレントのマネージャー、さらには技術スタッフや美術スタッフといった幅広い職種の人々と関わり、番組作りを進行させる役割を担います。そのため、デスクを経験することで、テレビ番組の全体像を把握できるだけでなく、業界内の幅広い人脈や知識を培うことができます。
また、制作デスクは「制作を円滑に回すための潤滑油」としての役割も大きなやりがいです。収録に必要な備品やお弁当の手配、経費精算や社内外の連絡調整など、多岐にわたる業務をこなすことで現場がスムーズに動き出します。自分の段取りや気配り一つで収録現場の雰囲気が良くなり、進行が円滑になるのを実感できるのは、他の仕事では味わえない達成感です。単なる事務職にとどまらず、制作現場の一員として柔軟に対応するスキルが養われるのは、キャリアとして大きな財産になります。
働き方も、基本は決められた定時で業務をこなしていくため残業も少なく、土日祝日も暦通り休めます。収録日が土日祝日だと出勤になりますが、その分平日のどこかで振替ることができるためホワイトな環境で働くことが可能です。制作スタッフの中ではプライベートの予定も立てやすく、仕事とプライベートの両立も叶います。
まとめ
制作デスクは「裏方でありながらクリエイティブに関わることができる」魅力があります。「段取り力」「コミュニケーション力」「柔軟な対応力」といった多様なスキルを磨きながら、番組の成功を陰から支える存在です。大変なことも多いですが、その分「自分がいたから番組が成り立った」という実感を持てるやりがいを感じられるお仕事だといえます。