テレビの仕事について調べていると「制作進行」という言葉を見かけたことがある方がいらっしゃるのではないでしょうか。制作進行の仕事内容やキャリアアップなど細かい部分がわからない方は多いかもしれません。
そこで今回は制作進行の仕事について、深掘りしてみましょう!
制作進行とは
バラエティ
このサイトを見ている方ならバラエティの制作手順は知っている方も多いのではないでしょうか。もし、バラエティの仕事について、まだよくわからない方は以下の記事を参考に、バラエティ制作の流れを知ってみましょう。
★Check!!➡【テレビ業界事典】バラエティ番組ADの仕事内容と楽しい業務特集
バラエティの制作進行の仕事は制作が円滑に進めるための調整をする業務。
制作スタッフを手配し、各部署の間に立って連携をはかったり、スケジュール調整をしたりと、業務の幅はかなり広いです。常に進捗状況を把握しなければいけません。また、 電話や来客の対応、現場の弁当や楽屋の確保、番組制作で発生する経費の処理も行います。また、土日は外部とのやりとりができないため、他の業務が終わっていれば土日が休みになる可能性もあります。(良い面でもありますが、土日までにやるべきことが終わっていないと業務に追われることも…)
制作進行に求められるスキルとして、大切な能力のひとつがスケジュール管理能力です。また常に広い視野を持ち、トラブルにも柔軟に対処していく対応力が求められます。もちろんさまざまな立場のスタッフや外部とのパイプ役になるためのコミュニケーション能力も欠かせません。
制作進行として実績を積むと、制作進行を統括する制作デスクに、ゆくゆくは制作現場全体を統括するプロデューサーにステップアップできます。制作進行の現場は激務になることが多く、キャリアアップまでの道のりは長いですが、制作進行がいなければ現場が始まりません。ひとつひとつは細かいですがやりがいのある仕事です。
ドラマ
ドラマの制作進行についてはテレキャリアで以前ご紹介しております。
バラエティとドラマは同じテレビ局で動いてはいるものの、かなり進行の仕方に違いがあります。そのため、ドラマ志望の方は以下の記事もしっかりチェックしましょう。
ぜひこちらも合わせて制作進行という仕事を学びましょう!
アニメ
バラエティとドラマ以上に違いがあるのがアニメの制作進行です。アニメ作品が世の中に出るまでには、実はたくさんの工程があります。
【アニメが公開されるまで】
1.企画立ち上げ
2.基本的な設定・主要スタッフの決定・製作委員会の組織化・資金調達などの段階
3.作品を構成する各素材の制作から撮影・編集を経て完成するまでの段階
4.完成した作品の放送・配信・上映や関連商品・イベント等の展開
上記のように、多くのプロセスがありますが、制作進行は基本的に作品の映像が完成するまで、つまり3が主な仕事範囲となります。アニメ制作の工程をスケジュールに沿って進めていくために、作画作業の割振り、進捗状況の把握、各作業担当者との連絡調整、予算の管理などを行います。
【上記3の段階での細かい工程】
①シナリオ作成:各話のストーリーを作成
②絵コンテ:カット割り、セリフを決定
③原画:作画作業。動きのポイントを描く
④動画:原画と原画をキレイに繋ぐ数千枚の絵を作成
⑤彩色・色付け:アニメの世界観を色づける
⑥背景:シーンごとの背景を作成
⑦撮影:動画と背景を組み合わせる。映像データを作成
⑧仕上げ~完成!
ここからアニメ制作の流れとともに制作進行の役割をご説明いたしますが、上記のアニメの制作工程を知らないと少し難しいと思いますので、ゆっくり丁寧に理解していきましょう!
アニメの制作進行は、放送や配信など決められた公開日(もしくは納品日)に向けて、多くの専門職が分担して作業を進めます。そのスケジュール管理と関係者間の連絡調整、進捗把握を行います。そして制作プロジェクト全体を統括するプロデューサーや監督の方針のもとに、工程がスケジュール通り進むよう調整します。
作品全体の制作進行管理の責任者である制作デスクの下に、作品の一定部分(テレビアニメであれば各話など)の担当が置かれる(これを制作進行と呼びます)ことが多く、その制作デスクがまとめ役となり、制作進行が動くことになります。
まず、監督をはじめとするスタッフが、作品全体の流れや構成、キャラクター設定などの基本的な方向性を決定し、各話の構成、脚本、作画、美術、撮影、音響など各部門の担当者と打ち合わせを重ねながら細部を詰め、場面ごとの設計図に当たる絵コンテを作成する。
制作進行は、絵コンテに基づいて、担当する各話に必要な素材や作業の見積りや割振りを行い、スタッフを確保し、具体的な作業スケジュールを立てる。このように、“作品の完成までどのように進行するかの枠組みを作る人”をイメージすると良いかもしれません。
制作プロダクションや監督の方針などにより制作進行の仕事の範囲や進め方は多少変わってきます。ここでは一例としてのご紹介になるので、現場では臨機応変に動く必要があります。
まず、絵コンテをもとに、香盤表と呼ばれる作業進行のための総括表と、各シーンをカットに割って作画担当者を指定するシーン割表、作業のスケジュール表を作成する。必要な原画、動画、背景等の数を見積り、納期までに作品を完成させるためのスケジュールを組み、スタッフごとの作業の割り振りを行う。
作画を担当するスタッフ(アニメーター)は制作デスクが確保することもあるが、経験を積んだ制作進行に任されることも多い。自社内だけでなく、フリーランスのアニメーターや海外企業も含め、社外にも多くの作業を発注する。
制作作業が始まったら、スケジュール表に基づいて各工程の進捗状況をこまめにチェックする。例えば、原画制作の作業が滞ると、その後の動画制作や撮影、編集等のスケジュールに余裕がなくなるなど、前の工程の進捗が後ろの工程に影響するため、全体を見渡しながら関係者と調整し、必要に応じてスケジュールの修正を行う。
作画担当者から提出された素材は回収して演出・作画監督のチェックを受け、修正点をフィードバックする。演出・作画監督のOKが出れば、とりまとめて次の工程に送る。近年は作業のデジタル化が進んでいるが、すべてがデータでやりとりされるわけではなく、紙で提出された素材を回収に出向き、スキャンしてデータ化したり、カットごとに素材を袋に入れて整理・保管するといった作業もある。
着色作業が終わった素材や背景素材を撮影に入れ、その後の編集、音入れなどの作業も円滑に進むよう関係者間の連絡調整に当たります。撮影後の映像素材を監督や演出をはじめとする関係者が見て修正部分を見つけるラッシュチェックにより指示されたリテイク作業を一覧表にまとめ、効率よく修正作業が行われるよう進行管理をする。ここが制作進行の仕事の後半の山場。これらのリテイクが反映されたマスター映像に入れるスタッフクレジット(役職・名前のリスト)を準備し、最終のクライアントチェックを経て、公開される映像が完成します。
打合せ会議の設定や会議資料の作成、素材の整理・保管、経費の精算などの事務的な仕事も作業を円滑に進めるために重要であり、さらにコミュニケーション能力・調整力も必要なため、かなりマルチな能力が求められる仕事といえます。
テレビアニメの場合、一般的に1クール(3か月)の放送話数は30分枠12話前後であるので、制作進行は並行して複数話数を担当することが多く、1話分が完成して納品した後も次の担当分について同様に仕事を進めることになるので、同時に並行して仕事を進める力、全体を見渡す力も必要になります。
まとめ
さて、今回はバラエティとアニメを中心に、制作進行の役割をみてみました。他のスタッフの仕事の裏には“制作進行の下準備”があったことをお分かりいただけたと思います。決して楽な仕事ではありませんが、未経験でも挑戦でき、やりがいのある仕事です。制作に興味のある方はぜひ制作進行の仕事を選択肢に入れていただけますと嬉しいです!