鬼滅や国宝が大バズり!仕掛け人はアニプレックス!ヒット連発の裏側とは?

近年のエンタメ業界では、国民的アニメ『鬼滅の刃』や映画『国宝』といったヒット作が次々と生まれています。これらの作品に共通して深く関わっているのが、ソニーグループ傘下の アニプレックス です。アニメや映画はもちろん、音楽・...


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近年のエンタメ業界では、国民的アニメ『鬼滅の刃』や映画『国宝』といったヒット作が次々と生まれています。これらの作品に共通して深く関わっているのが、ソニーグループ傘下の アニプレックス です。
アニメや映画はもちろん、音楽・ゲーム・グッズ・イベントなど幅広い事業を手がける同社は、業界を志望する学生にとっても避けて通れない存在といえるでしょう。
今回は「なぜアニプレックスがヒットを生み出し続けられるのか」を作品事例を交えながら解説していきます。就職活動でエンタメ業界を志す方にとっても、企業理解を深めるヒントになるはずです。

アニプレックスとは

ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下のアニプレックスは、1995年9月に設立され、日本のアニメビジネスを牽引する総合エンタテインメント企業です。アニメーションを中心に、ゲームや音楽など多彩な企画・制作・事業展開を手がけ、「世界中に感動を届ける総合エンタテインメントカンパニー」を掲げています。

代表的なヒット作品

アニプレックスは最近多くのヒット作に関与してきました。以下の作品では、制作委員会への出資や制作プロデュース、配給などでアニプレックスが中心的に関わっています。

『鬼滅の刃』

2019年のTVアニメ化に始まり、2020年公開の劇場版『無限列車編』はコロナ禍にもかかわらず異例の大ヒットを記録しました。アニプレックスは制作委員会に参画し、映画版は興収400億円を突破しました。
公式SNSを通じた情報解禁やビジュアル公開が話題を呼び、ファンが積極的に拡散したことも成功要因とされています。
また、多数のキャラクターを活かし、ローソンやバンダイ、パズドラ、ダイドーなど各社とのコラボキャンペーンを展開。アパレルや食品、アミューズメント施設とのタイアップも多彩に実施し、作品の世界観を「街中」で体感できるプロモーションがファン層外への訴求にも貢献しました。
​​2023年からは劇場版3部が制作・配給され、国内外95か国で「ワールドツアー上映」されるなどグローバルな展開も進み、2025年7月18日に『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開されています。

『呪術廻戦』

2020年のTVアニメ開始以降、瞬く間に人気を博した作品です。アニプレックスは放送・配信権や映像ソフト製作を担当し、コミックス累計発行部数は1億部を突破しました。
プロモーションではユニークな広告手法が目立ちます。2024年7月の最新コミック刊行に合わせ、「ファンタ学園」CMをオマージュした実写Webムービーを公開するなど大胆な施策を実施しました。また、渋谷駅構内や屋外をジャックする大型広告も繰り返し展開し、キャラクターやセリフで街を彩ることで話題を集めました。
​​TVアニメ第2期以降も新キャラ商品やテーマソングCDの売上が好調で、アニプレックス制作の映像パッケージや公式グッズが安定した収益源となっています。

『SPY×FAMILY』

2022年にTVアニメ化され、家族コメディとアクションを融合させた趣向で幅広い層から支持を獲得。劇場版も2023年12月に公開されました。アニプレックスは制作委員会の主要メンバーとして企画から関与し、アニメ・ゲーム・グッズなどのメディアミックス展開を牽引。企業タイアップが大成功を収めており、『販促会議』の特集によればBOSSコーヒーの「父の日キャンペーン」やロッテの「母の日チョコ」、出版メディアとのコラボなど約25社が参画する大規模なキャンペーンが実施されました。これらコラボレーションは老若男女に受け入れられ、起用企業からは「キャンペーン実施で売上が大幅に伸びた」という声も上がっています。
公式サイトのコラボページには、XRライド(USJ)やファミレス(ジョイフル)、万博イベント出店、食材・菓子・ゲームアプリなど数十件に及ぶタイアップ情報が掲載されており、広範囲にわたるメディアミックスで新たな「推し消費」を生み出しています。

『国宝』

吉田修一の長編小説『国宝』を、李相日監督が実写化。日本公開は2025年6月6日で、配給は東宝です。製作幹事はアニプレックスと実写スタジオのMYRIAGON STUDIO、制作プロダクションはクレデウス(C&I エンタテインメント系)という座組で制作されました。主演は吉沢亮、共演に横浜流星・渡辺謙ほか。公開から約7週間で動員510万人・興収71.7億円に到達し、現在はなんと142億円を超え、観客動員数1000万人を突破したとのこと。
5月の第78回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出されましたが、公式上映後に約6分間のスタンディングオベーションという出来事自体が強力なニュースフックになり、日本国内の一般メディアでも一斉露出されました。結果として「歌舞伎×大作ドラマ」という難易度の高い題材に、わかりやすい“評価の文脈”を得、幅広い層の興味へと繋がりました。

『Fate』シリーズ

アニプレックスが長年関与するTYPE-MOON原作シリーズ。2020年公開の劇場版『Fate/stay night [Heaven’s Feel] III.spring song』は観客動員62万人、興収10.16億円のスマッシュヒットを記録しました。
またスマホゲーム『Fate/Grand Order』(略称FGO)は世界的なヒット作で、アニプレックス子会社のラセングルが開発・運営を担当しています。FGOは周年企画として全国新聞広告や大型イベント(FGOフェス、リアル脱出ゲームなど)を仕掛け、ゲームユーザーだけでなく普段ゲームをしない層にもブランドを浸透させています。

プロモーションとメディアミックス戦略

ヒット作品ごとに、アニプレックスは多角的なプロモーションとメディアミックス戦略を展開しています。SNSや公式Webでは「ビジュアル解禁」「PV公開」など最新情報を逐次発信し、ファンの関心を持続させています。例えば『鬼滅の刃』では公式Twitterが解禁投稿するたびリツイートが急増し、ファンの盛り上げに大きく寄与しました。また、キャラクターの誕生日祝いやフォロー&RTキャンペーンなどでファンを巻き込み、話題を絶やさない工夫が多く見られます。
企業コラボは作品の世界観を街中に広げる効果があります。『鬼滅の刃』はまんじゅう店や自販機コラボ、『呪術廻戦』は地方自治体やメーカーのキャンペーンなど、関連商品展開を積極的に許諾し、販路を拡大しています。『SPY×FAMILY』のように、日常生活と親和性の高い企業タイアップ(飲料、ファストフード、家庭用品など)を打ち出すことで、コアなアニメファンだけでなく幅広い一般層にもアプローチしています。
さらにグッズ展開では、アメリカや中国など地域ごとの嗜好を分析し、現地でライセンス制作したアパレル・フィギュアや、海外コラボ商品を展開しています。独自のメディアミックス部門がゲーム・玩具・出版・舞台などへ展開し、コンテンツを生み出す点も他社と異なる強みといえます。

制作委員会体制と他社との違い

自社系列のアニメスタジオ(A-1、CloverWorks)を持っていることが大きな強みで、制作現場との距離が近いオリジナル企画や高品質な映像制作を実現します。他社との違いとしては、早期から原作・制作会社と連携し企画段階から参画する点が挙げられます。原作がないオリジナル作品でも制作会社と共同で一から企画を練り、マーケティング戦略まで含めて作り込むため、作品の独自性が高まります。また、ソニーグループによる配給・流通ネットワーク(映画配給、動画配信プラットフォームなど)を活用し、放送から配信、DVD・BD、市場流通まで自社で一貫してコントロールできる点も他社にはない特徴です。

まとめ

アニプレックスは 制作から配給・宣伝・商品展開まで一貫して手がけられる体制 と、ソニーグループの強力な支援を背景に、国内外で大規模なヒットを連発しています。
こうした総合力は、単なるアニメ会社にとどまらず「エンタテインメントをどう事業化し、世界に広げていくか」を考える企業姿勢そのものです。
エンタメ業界を目指す就活生にとっては、「作品を届ける仕組みづくり」「グローバル視点での展開力」といった観点を学べる好例といえるでしょう。
アニプレックスを研究することは、単に人気アニメの裏側を知るだけでなく、業界で求められる視点やスキルを理解する近道 になるのではないでしょうか。