テレビドラマにリアリティをもたせるため、欠かせないのがドラマ監修です。ドラマを観ていて「このやりとり、本当にありそう…!」「専門用語も自然だな」と感じたことはありませんか?その“リアリティ”の裏には、監修というプロフェッショナルの存在があります。ドラマで流れるスタッフロールで名前を見たことがある人もいるかもしれませんが、そもそもどんなお仕事なのでしょう。今回はドラマ制作の現場で重要な役割を担う「ドラマ監修の仕事」についてご紹介します!
そもそも「ドラマ監修」って何をするの?
ドラマ監修とは、作品のテーマや設定に関して専門知識をもとに内容の正確性や説得力を高める役割を担う仕事です。
視聴者が「違和感なく」ドラマの世界に入り込めるよう、細部に至るまでリアルさを追求する職人たちです。医療ドラマでは医師や看護師が監修を行い、法律ドラマでは、法律の専門家が監修を行います。近年は、SNSや動画配信を通してドラマが長く語られる時代。視聴者の目も肥えているからこそ、“ちょっとした違和感”が作品の印象を左右することも。監修者の丁寧な仕事が、作品全体の信頼感に繋がります。
ドラマ監修の種類と担当する分野
ドラマのジャンルに応じて、様々な専門分野の監修者が関わります。
ジャンル | 主な監修内容 | 担当する専門家の例 |
医療ドラマ | 病名・処置・手技・専門用語の確認 | 医師、看護師、救急隊員など |
法廷ドラマ | 裁判手続き・法用語・証言の流れ | 弁護士、検察官、裁判官経験者 |
警察ドラマ | 捜査手順・階級制度・無線対応など | 元警察官、警察コンサルタント |
歴史ドラマ | 時代背景・衣装・言葉遣い | 歴史学者、時代考証家 |
スポーツ系 | ルール、試合運び、練習描写など | 元アスリート、コーチ |
音楽・芸能系 | 現場の雰囲気、楽器の扱い方など | 演奏家、舞台監督、演出家など |
ドラマ監修の仕事内容
基本のお仕事内容は下記です。
脚本段階でのチェック
・専門的な用語・表現が適切かを確認
・不自然な流れや事実と異なる描写を修正提案
撮影前のリハーサル協力
・役者への所作・発声・動作などの指導
・使用する道具や衣装の正確さのチェック
撮影現場での立ち合い・助言
・実際の手順や専門的動作の監修
・セリフや演技にリアリティを与えるアドバイス
美術・小道具・資料監修
・背景や机の上の資料、パソコン画面の内容なども細かくチェック
・視聴者の目に触れるすべてに“リアルさ”を注入!
さらに、ここからはジャンルごとの特徴をみていきます!
医療監修|命を扱う現場のリアルを支える
医療監修には、大きく分けて2種類あります。まずは「原作あり」のドラマ。これは、病名や手術の術式、いかにして治癒したかなどの詳細がすでに原作に書かれています。この場合の監修は主に技術指導です。俳優さんが手術をする場面に立ち会い、医療機器を使ったり糸を結んだりする技術を指導して、医師を演じる手助けをする。いわば外科監修、技術監修です。一方、「原作なし」の医療ドラマの場合は、医療監修の幅は非常に広いものになります。原作がないケースでは、医療に関する部分を制作者と一緒に考えていく役割も担います。このタイプの仕事では沢村一樹さん主演のドラマ「DOCTORS〜最強の名医〜」(テレビ朝日)などがあります。
主な担当分野
・病気、処置、手術シーン
・医療用語や器具の使い方
・医師や看護師の言動と所作
関わる人
現役または元医師、看護師、救命救急士など
特徴
・命に関わる描写が多いため、正確性と倫理感が求められる
・専門用語が多く、視聴者への“わかりやすさ”とのバランスも重要
警察監修|捜査や階級制度をリアルに再現
警察監修には、作品の企画段階から参加する場合と、すでに出来上がった準備稿などのチェックから参加する場合の2種類があります。例えば、映画「望み」では、警察監修が準備稿から参加したそうです。まずは準備稿の中の警察関連の描写部分にチェックを入れ、問題点をあげ、スタッフからあがった疑問点についてやり取りして、合意点を見つけます。それから、各役者の所作や現場設定を随時指導し、撮影が始まると、現場の要請があれば現場指導もします。
主な担当分野
・捜査手順・取り調べの流れ
・階級制度・警察組織のルール
・無線、敬礼、立ち居振る舞い
関わる人
元警察官、警察関係のジャーナリスト、警察コンサルタントなど
特徴
・階級や上下関係の描写が多いため、細かなリアリティが問われる
・組織のルールや「言ってはいけないこと」の把握も必要
法律監修|法廷シーンの説得力を生む
法律監修は、ストーリーが法律的に成立するかをチェックします。 ストーリーが不成立の場合には、代替案も提案します。 一つ一つの流れやセリフが法律的に間違いないか、不自然でないかチェックしています。
主な担当分野
・裁判シーンの進行・言い回し
・弁護士・検察官の所作や考え方
・法律的な根拠・セリフの整合性
関わる人
弁護士、検察官、元裁判官、司法書士など
特徴
・言葉や間のリアリティが命
・法改正により情報が古くなりやすい点にも注意が必要
教育監修|“学校あるある”を違和感なく描く
教育監修は、学校教育の専門知識に基づいて、ドラマの学校や授業シーンのリアリティを追求する仕事です。ドラマの学校や授業シーンの撮影場所を、実際の学校や授業シーンに見せるようにセッティングします。また、ドラマの学校や授業シーンの演出や脚本に、学校教育の専門知識に基づいてアドバイスします。
主な担当分野
・授業の進行や教科内容
・教師・生徒の関係性や言動
・校則・学校行事・クラス運営など
関わる人
現役または元教員、教育委員会経験者、教育ジャーナリストなど
特徴
・多くの人が経験しているからこそ、“嘘っぽさ”がバレやすい
・教育現場の変化(ICT導入、ジェンダー配慮など)への理解も必要
ドラマ監修に携わるには?
以下に主なルートをご紹介します。
制作会社・脚本家・テレビ局などからの「直接依頼」
・過去の実績や紹介などで声がかかるケース
・専門家ネットワークや学会などの紹介経由が多い
監修に特化した会社・団体に登録・所属する
・例:医療監修協会(医師・看護師向け)
・映像制作の経験がなくても、専門知識があれば参加可能なことも
自ら売り込む・SNSや実績公開で注目を集める
・医療監修者がX(旧Twitter)で監修事例を発信 → 制作会社が接触
・法律ブロガーやYouTuberとして発信 → メディア監修の声がかかる など
大学や講演、メディア取材での露出から依頼につながる
・学術的知見を求められる歴史や法律分野に多い
まとめ
今回はドラマ監修のお仕事についてご紹介しましたがいかがでしたでしょうか。監修者は“ドラマのもう一人の脚本家”!どんなに俳優の演技が素晴らしくても、設定や言動にリアリティがなければ視聴者は冷めてしまいます。 その“違和感をゼロにする”ために活躍しているのが監修者たちです。「監修」という仕事は、ドラマづくりの裏側でリアリティと信頼を支える“縁の下のプロフェッショナル”。 エンタメ業界を志す皆さんも、こうした職種に目を向けてみてはいかがでしょうか?