クイズ番組を観ていて、出題されている問題は一体誰がどのようにして作っているの?と疑問に思う方もいるのではないでしょうか?
実際に出題できる問題が作られるまでには様々な工程があります。
今回はクイズ番組の制作経験のあるADが、クイズ番組問題作成の裏側について紹介したいと思います。
出題される問題の作成方法
クイズ作家さんが案出し
クイズ作家とは、テレビ、新聞、雑誌などで使われているクイズの問題をつくる作家さんです。
クイズ番組の問題を考える時に、実際にクイズ作家さんに案を出してもらいます。
まずADがディレクターにどのような問題案がほしいのか聞いて、クイズ作家さんにその旨をお伝えし、
作成していただきます。
作家さんから案が返ってきたらディレクターに共有し、その中から選んでいきます。
そして作家さんも含む会議にて、この問題で出題しても大丈夫かどうか話し合い、OKが出たら問題が決定となります。
ADまたはDが案出し
クイズ作家さんだけでなく、ADやディレクターが問題案を出すこともあります。
実際に出題する問題を決めるのはディレクターなので、ディレクター本人が考える場合もありますし、ADに「問題案だして〜」と言われることも多々あるので、ADはいくつか考えて候補を出します。
そして、担当ディレクターとADのみんなで分科会を行い、出題できそうな問題を決めていきます。
そのため、年次関係なくADが考えた問題が実際に出題されることもあります。
過去に出題した問題とは被らないように注意
クイズ番組で問題を出題するにあたり、番組内で過去に出題した問題とは被らないように作成しています。
その確認をするために、番組では過去問をまとめた資料を作成しています。長寿番組だと莫大な量の過去問題集が存在します。
クイズ番組のレギュラーで出演している演者さんが例え過去の問題を覚えていないとしても、そこは番組の決まりとして、過去問とは被らないように意識して徹底しています。
もうネタがない…!となっても絞りだしたり、新コーナーを立ち上げたりしながら試行錯誤して制作しているのです。
問題の精査
出題したい問題があったとしても、その問題が成立するのかどうかしっかり精査する必要があります。
実際に問題に使われる情報の正確性を確認する「裏取り」作業を行っています。これは非常に重要な役割のひとつです。
問題案を出す時点である程度は確認しますが、実際に出題すると決まった問題に関しては、しっかりと調べて裏取り資料を作成したりして確認をします。
クイズは事実を伝えなければならないため、情報の正確性を深掘りするのは時間もかかりますし、大変な作業です。
シミュレーション
出題する問題が決まったら、正解率などを確認するためにシミュレーションを行うこともあります。
実際にADがクイズを解いてみて、難易度や面白さなどを確認します。このシミュレーションで盛り上がらなかったりしたら、問題を考え直して改善します。
実際に問題を解いてみないとわからないこともたくさんありますので、シミュレーションを行うのは非常に重要なことです。
許可取り
クイズ番組では、許諾を取る作業が非常に多くあります。問題数にもよるのですが、多ければ多いほど大変です。
公式の情報を使用する場合は、その情報元に問い合わせして、問題として使用しても良いか聞く必要がありますし、お店や企業にまつわる問題を出題する際には、その会社に問い合わせてクイズ番組で取り上げても良いか許諾を取る必要があります。
また、イントロクイズや歌詞を当てるクイズなどは、問題として使用する音楽のレーベル会社に許諾を取ります。
許諾を取る時は、出題が可能かどうかを収録日までに返事が欲しいという旨をお伝えすることが必須です。
もし間に合わなければその問題は許可が得られていないということになり、ボツになってしまいます。それは絶対に避けたいので、早めに動いて収録日までに返事をいただけるかどうか先方にしっかり確認します。
また、放送日や番組の概要、実際に出題する際の問題文と解答などを記載した企画の概要書を先方にお送りし、情報をしっかりお伝えしておくことが大切です。
資料を確認していただいたうえで、もし先方より「問題文を変更してほしい」や「情報はこっちが正しい」などの指摘があった場合には、それに従って変更します。
このようにして許可が取れた問題を出題しています。
素材集め
問題が出題される際に、画像や映像も一緒に出ているのを見たことがあるかと思います。その画像や映像を集めて、許可が必要な素材は許可を取るという作業があります。
まずディレクターに使用したい素材を聞いてから、ADがその素材を探します。スポーツやアニメの素材など、お金がかかる素材もありますので、かかってしまう金額をAPさんかプロデューサーに伝え、相談しながら使用する素材を考えます。
ディレクターにも演出上どうしても使用したい素材もあるかと思いますので、それも考慮しながら相談し、決めていく必要があります。
素材が間に合わないということにならないように、時間に余裕をもって先方との連絡をスムーズに行い、期限を意識しながら動いています。
収録前日
収録の前日は、収録日に必要なカンペや資料を作成したり、収録日の動きを確認したりします。
この日は大体、終電か泊まりになることが多いです。
収録当日にバタバタしたりしないように、最終確認として全体を念入りにチェックしています。
カンペ作り
収録を進行するうえで必要なカンペの作成をします。
演者さんの話す内容が書いてあるカンペはよくバラエティ番組などでチラッと見ることがあるかと思います。そのようなカンペも少しは作成しますが、それに比べてクイズ番組ならではのカンペの作成が多くなります。
得点で競うクイズ番組だと、現状の得点がわかるように得点を記入できる得点表を作成します。
また、解答した後のトーク時に、演者さんが解答したことを振り返っていじったり褒めたりできるように、
解答を記入できるような表をカンペで作成します。
このように、トーク番組やロケ番組などとは違うカンペの作成が多くなります。
問題資料作成
収録当日に使用する問題資料の作成をします。
たくさんコーナーがあるようなクイズ番組は、コーナーごとに資料を分けて見やすいように資料を作成します。資料の中身としては、問題文と解答を記載し、解説がある問題はその解説文も載せています。
この問題資料は、解答も載っているので演者さんには渡さず、スタッフのみが持つものです。
当日はこの問題資料を見ながら収録が進んでいきます。
リハーサル
収録が始まる前には、カメリハ(カメラリハーサル)を行います。
カメリハとは、スタッフが出演者の名前が書かれた札をつけて、出演者と同じ動きをとり、カメラマンが立ち位置やピントを確認できるようにするために行います。
クイズ番組のカメリハでは、実際に出題するクイズを解きます。実際のセットで演者と同じように問題を解くのですが、これは正直めちゃくちゃ楽しいです。
収録本番にミスがないよう、しっかりリハーサルを行い、あれ?と思ったところは修正したり話し合ったりして万全な状態で収録に臨みます。
収録中
収録中は様々やることがあるのですが、クイズ番組ならではのやっていることをいくつか紹介したいと思います。
カンペを出す
収録前日に作成したカンペを演者さんに見えやすい位置に出します。
例えば、解答するときにどのタイミングでどのようなセリフで解答するのかわかるようにカンペを出したり、現時点で得点は何対何なのかわかるように作成した得点表のカンペに計算した得点を記入して出したり、今何問目なのかわかるように、1問目、2問目、3問目…とめくっていくようなカンペを出したりします。
普通の番組だとディレクターがカンペを出すことが多いですが、このようなカンペはクイズ番組ではADが出しています。
解答をメモする
解答をメモするというのは、演者さんに見せる用にメモするのと、自分用にもメモします。
演者さんに見せる用のメモは、「収録前日のカンペ作り」の部分でもお話ししたように、解答した後のトーク時に、演者さんが解答したことを振り返っていじったり褒めたりできるようにするために使います。
作成したカンペに解答者と解答、正誤を記入して演者さんに見せます。
問題によっては、大きいホワイトボードにメモしてそれを演者さんに見せる場合もあります。
そして、自分用のメモですが、これは収録後に「成績表」というものを作成するときのためにメモしています。
「成績表」とは、ゲスト等の概要、出題した問題、解答者、正誤を表にまとめた資料のことです。
収録後、この資料を作成するために担当の人はメモしておく必要があります。このように、収録中はメモに徹しているスタッフもいます。
サブで音を出す
「サブ」とは、「副調整室」のことです。
放送・収録中にスタッフがいる場所で、ディレクターが指示を出しスイッチャーやミキサーなどが映像・音声を操作しています。スタジオ番組運行の司令室であり、スタジオで行なわれる番組の進行全てのコントロールを行なう場所です。
この場所でディレクター陣が指令しているのはもちろんなのですが、ADがオープニングの音を出したり、〇✕判定の「ピンポンブー」の音を出すこともあります。
この「ピンポンブー」の音を出す人は重大な役割ですので非常に緊張します。正誤をすぐに判断して音を正確に出す必要があります。
まとめ
今回は、クイズ番組の裏側を紹介しましたがいかがだったでしょうか。
クイズ番組ならではの作業がたくさんあったかと思います。番組内容的にロケが少ない分、全体的にデスクワークが多くなる傾向があるということがこの記事を通してお分かりいただけたのではないでしょうか。
自分が考えた問題が実際に番組で使われるということもあるかもしれませんので、クイズを考えることが好きな人、またクイズに答えることが好きな人も、是非クイズ番組の制作に挑戦してみてください。