許諾書とは?

「許諾書」(出演承諾書)は、番組制作側がインタビューやロケをした際に、取材対象者に対して放送することの許可をお願いし、対象者側がそれに承諾したことを記録する大切な書類です。
許諾を取らずに無断で放送してしまうと、肖像権や著作権、商標権などトラブルにつながる恐れがあります。
許諾書を書いてもらうのは、新人ADが任せられる仕事のうちの一つです。
許諾書についてまとめてみたので、是非参考にしてみてください!
許諾書の内容
許諾書には何が書いてあるのか、フォーマットはテレビ局や制作会社ごとに異なりますが一般的には以下の内容が記載されています。
番組名
放送局と番組名セットで明確に記載しています。
例:日本テレビ『ヒルナンデス!』、TBS『マツコの知らない世界』など
使用目的
撮影した映像や写真をどのような目的で使用するのかが記載されています。
かつては「地上波放送のみ」というケースが一般的でしたが、近年は配信プラットフォームの拡大により、TVer・YouTube・Netflix・番組SNSなど複数の媒体で使用される可能性が増えています。
そのため、テレビでの放送だけでなく、「再放送や地上波以外のBS/CSチャンネルでの放送、TVerなどの見逃し配信サービス、番組の公式SNS(X・Instagramなど)での宣伝利用」といった二次利用の可能性もあるため、これらを明記し、承諾を得ることが必要です。
許諾内容
撮影、放送に関してどこまで許可するかを明確に示す項目です。
「撮影された映像・音声・写真等について、番組制作・放送・配信・宣伝の目的のために、編集・加工・複製・再利用することを許可します。」というように、撮影した素材を編集して使用することの承諾を得ます。
また、肖像権・店舗のロゴ・商品名などを扱う場合は、
「映像・音声・写真・商標を含むすべての素材の使用を許可します」という文言が含まれていることもあります。
撮影日、ロケ場所
撮影を行った日の日付や場所が記載されています。
連絡先
取材対象者に、住所、氏名、電話番号、生年月日、メールアドレスを書いてもらいます。
後日、取材対象者に追加で話を聞きたい時などに使用するため、できるだけ丁寧に書いてもらうようにしましょう。
許諾書に取材対象者の特徴をメモしておく

次の取材に移る前に、取材対象者の特徴をメモするようにしましょう。
時間が経ってしまうと、誰がどの人だったのか分からなくなってしまいます。
何組目に取材した人たちなのか、複数人の場合はどの立ち位置にいた人なのか、性別、服装などの特徴、話の内容などをメモをしておくことが重要です。
また、このメモは自分以外の人が見た時でも読める字で書きましょう。
許諾書を書いてもらう時の注意点
取材対象者が”未成年”だった場合
取材対象者がまだ未成年だった場合は、保護者の許可も必要になります。
その場で保護者に電話をし、撮影内容や使用目的等の説明をして承諾を得ます。
その際、保護者の氏名や連絡先なども忘れずに記載するようにしましょう。
取材対象者が”酔っぱらい”だった場合
酔っぱらっている方に許諾書を書いてもらう際によく起こりうるのが、字が汚くて読めない、間違った電話番号を書いているということです。
字が汚くて読めない場合は、その場で「お名前の読み方は〇〇様でお間違い無いですか?」というように確認をし、メモを残しておきましょう。また電話番号も不安な場合は、間違いがないかその場で電話をかけて確認させてもらいましょう。
ロケ場所ごとの注意点
テレビ番組のロケは、街中・商業施設・道路・公園など、さまざまな場所で行われます。どんなに短時間・少人数の撮影でも、事前の申請と許可がなければ原則撮影をすることはできません。許可を取らずに撮影すると、トラブルやクレーム、最悪の場合は放送中止につながることもあります。
ここでは、特にロケで多い「商店街」と「道路」での注意すべきポイントを説明します。
商店街

商店街で撮影を行う場合、まず最初に確認すべきは、「商店街振興組合」または「商店街連合会」などの管理団体です。
商店街は、一見すると「それぞれの店舗が個別に運営している通り」ですが、実際には地域ごとに運営組織があり、通り全体の管理やイベント、環境整備などを担っている団体が存在します。
たとえば、
・「〇〇商店街振興組合」
・「〇〇商店会」
・「〇〇商店街協同組合」
といった団体があり、ロケや取材の際はここにまず相談するのが基本です。
商店街内の複数店舗で撮影する場合、個々の店舗許可と商店街全体の許可の両方が必要になります。
道路
道路上で撮影を行う場合、たとえ数分でも「道路使用許可書」が必要です。
これは、道路交通法第77条に基づくもので、撮影やイベントなどで一時的に道路を使用する場合に義務づけられています。
許可を出すのは、その地域を管轄する警察署の交通課です。たとえば渋谷区内なら「渋谷警察署交通課」が窓口となります。
申請が通ると「道路使用許可書」が発行されます。
撮影当日、警察官や通行人から確認を求められることもあるため、必ず許可証原本を携帯しておきましょう。
許諾書の取り扱い方

個人情報のため慎重かつ厳重に保管する。
許諾書には、取材対象者の氏名、住所、連絡先など、個人情報が多く含まれています。
そのため、扱いには細心の注意が必要です。
紛失・漏えい・誤送信などが起きてしまうと、個人情報保護法違反や信用問題につながる恐れがあります。現場では「一時的な紙の書類だから」と油断しがちですが、許諾書はれっきとした契約書の一種です。
机の上や車内に放置したりせず、ADはしっかりと管理責任を持ちましょう。
ロケ日やロケ場所に分けて保管する。
ロケが複数日に渡ったり、複数の場所で行われる場合、どの許諾書がどのロケのものかを明確にして保管することが非常に重要です!
「2025年10月10日_新橋ロケ」というように日付と場所を明記しておくと良いでしょう。
また、担当ディレクターや担当ADの名前も書いておくと後で照合しやすくなります。
ロケで許諾書を書いてもらったとしても、放送前に取材対象者から“放送NG”が出ることがあります。
たとえば、
・「やっぱり恥ずかしいので放送はやめてほしい」
・「仕事柄、テレビに出ると困るかもしれない」
・「家族や友人、恋人に知られたくない部分があるからカットしてほしい」
など、後日になって連絡が入ってきます。
そうした場合、本当に本人からの依頼かどうか、また映像と許諾書の人物が一致しているかを確認する必要があります。ここで、許諾書が適切に整理されていれば、すぐに照合でき、迅速な対応が可能になります。
逆に、許諾書がバラバラで整理されていないと、「この人の許諾はどこだ?」「この映像はどのロケ日のもの?」と確認に時間がかかり、編集スケジュールや放送納期に影響してしまうこともあります。
まとめ
今回は、許諾書についてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?
許諾書は、番組制作において出演や撮影内容を正式に承諾してもらう大切な契約書です。
もらって終わりではなく、ロケ後のトラブル対応のための資料としても扱うため、きちんと管理をしておきましょう!
